岸田文雄首相(自民党総裁)は8日、派閥の政治資金パーティー収入不記載事件の関係議員らへの処分を巡り党の内外に火種を残したまま、米国に出発した。政権の命運を握る衆院3補欠選挙(16日告示、28日投開票)直前の1週間の国内留守中、政権運営に不安を残す。自民は4日、安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)の議員ら39人の処分を決定した。事件に「けじめ」(首相)を付けた上で、訪米で局面を打開したい考えだったが、狙いとは裏腹に混乱が続いている。
安倍派議員からは「厳しすぎる」「処分の根拠が分からない」と不満が相次いだ。離党勧告を受けた塩谷立元文部科学相は「政治不信を招いた党全体の責任だと言っており、総裁の責任はある」と首相に矛先を向けた。野党も処分は不十分だと批判している。 処分を決める過程で党のガバナンス(統治)が乱れた。決定2日前、麻生太郎副総裁が敵対関係にある二階派事務総長の武田良太元総務相を党員資格停止にするよう要求。幹部の大半は「安倍派より悪質性が低い」として党役職停止を主張し、執行部内の対立が表面化した。首相と茂木敏充幹事長の溝は深い。事件の関係議員への聞き取りや処分を巡り、茂木氏の代わりに森山裕総務会長が調整する場面が目立った。政権運営の要だった岸田、麻生、茂木3氏の協力関係は崩壊した状況で、首相と距離を置く武田氏は政権中枢から外れた萩生田光一前政調会長、加藤勝信元官房長官、菅義偉前首相らと連携する動きを見せている。政局は流動化している。
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