「月の探査は『お金を燃やすだけだ』という人もいるが、長期的なスパンで見ると大きなリターンを得ることができる」。国営新華社通信は2013年、中国が初の月面着陸に成功した直後の記事でこう強調した。中国はその後、月面着陸を2度成功させている。
中国メディアによると、これまでに約10万人の研究者や技術者が月の探査事業に参画。ここでの研究内容が基になり、人工知能(AI)やエネルギー関連分野で技術革新が起きたという。日系メーカー関係者は「航空宇宙産業の裾野は極めて広い。中国は半導体などの分野でも宇宙開発で培った技術を応用している」と指摘した。 嫦娥6号は、地球からの通信が直接届かない月の裏側で採取という緻密な作業を行うため、「これまでで最も難しいプロジェクト」(専門家)と言われる。月の裏側には、核融合の燃料となるヘリウム3やレアアース(希土類)に加え、さらなる宇宙開発を進める上で不可欠な大量の水があるとみられている。 一方、技術と資源を同時に獲得しようとする中国の動きには、警戒感も強まっている。日本政府関係者は「日本とはベクトルが異なっている」とした上で、中国の宇宙開発が「予想よりも急速に進んでいる」との見方を示した。
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