ーズ(WS)制覇。09年WSでヤンキースを世界一に導いたゴジラのように、ポストシーズンでの躍動を夢見る大谷の胸の内を、 MLB 担当の中村晃大記者が「見た」。昨オフ、10年総額7億ドル(約1022億円=契約発表時のレート)でドジャース移籍。一方の松井氏は、02年オフに巨人からヤンキースに移籍した。名門の重圧と闘い続け、所属最終年の09年にはワールドシリーズ(WS)でMVPに輝いた。大谷はエンゼルスの6年間で一度もプレーオフに進出できなかったが、新天地では松井氏のようにチームを世界一に導く役割が求められる。
176号を放った後の取材で、大谷が唯一、表情を変えた場面があった。常勝ド軍の重圧がある中でどうやって戦っていくか―と聞かれると「(エ軍で)プレッシャーがかからなかったわけでもないと思いますし、エンゼルスに対して失礼なんじゃないかなと。重圧がかかる、かからないではなくて、1打席1打席が大事じゃないかなと思います」と両球団での違いを否定した。21年には「ヒリヒリするような9月を過ごしたい」とポストシーズンへの渇望を口にしたこともある。投打双方で次の1球に最善を尽くしてきた自負があるからこその言葉だろう。 ド軍に移籍した大きな理由はWS制覇にある。超大型契約の大半を後払いにし、補強費に充ててほしいと申し出た行為からも世界一への執着心は相当だ。本塁打数で日本人歴代1位になった今、最大の目標は、ベストの打席を重ねた先に、09年WSでMVPに輝いた松井のようなポストシーズンを過ごすことだろう。
取材では、176号が出るまでの打席で刻印の入った特別な球が使われたことも聞かれたが、この質問にはすぐに頭を下げた。「何か申し訳ないなというか、(ボール交換で)間延びもするので。投手もそうですけど、捕手もそうですし、アンパイアも…」。こちらの重圧とはこれでおさらば。目の前のプレーに常に全力を尽くすと同時に、相手を思いやる気持ちを忘れないことも、大谷が愛される理由だと感じた。(中村 晃大)
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