【フェニックス(米アリゾナ州)29日(日本時間30日)=四竈衛】 ドジャース 大谷翔平 投手(29)がダイヤモンドバックス戦に「2番DH」でフル出場し、4打数2安打1打点1四球と勝利に貢献した。米移籍以来7年間、毎年、春季キャンプを過ごし、慣れ親しんだアリゾナ。気温32度ながら太陽が西へ傾きかけた試合開始前には、開閉式の屋根が開け放たれ、大谷の頭上にも爽やかな風が舞っていた。練習の合間には、昨季までは見られなかった「球拾い」にも参加。通訳なしで同僚と会話するなど、リラックスした状態で試合に臨んだ。
初回、昨季特大アーチを放った左腕ヘンリーから中前打を放つと、第5打席には左腕アレンから左前へ適時打。同地では依然として1発こそ出ていないものの、通算12打数6安打、打率5割と、データ通りの相性の良さを発揮した。 勝利への欲をのぞかせたのは、打席だけではない。大谷はベッツらを含め、首脳陣から「グリーンライト(盗塁許可)」が与えられている1人。1回1死一、二塁の場面では、二走として3回、完璧なスタートを切った。結果的に得点には結び付かなかったものの、相手バッテリーを揺さぶる「撒き餌」としては十分だった。5回1死一、二塁では、再び二走として「フェイクスタート」を2回。三塁を背にする左腕相手にプレッシャーをかけ続けた結果、暴投と四球を誘い、決定的な4点の追加点につながった。試合前のロバーツ監督が「優勝するために、ここまですべてをかける選手を見たことがない。我々は小さな事を大事にしている」と評していた通り、常に最善を尽くす大谷の姿勢は表面的な数字だけでは計れない。
昨季は地区優勝を飾ったものの、ダ軍には地区シリーズで3連敗の屈辱を味わった。今季のド軍も現時点で地区首位を快走中とはいえ、早い時期から突き放せるに越したことはない。その宿敵相手に、逆転、中押し、ダメ押しと効果的な得点パターンだけでなく、18年ぶりとなる1試合無三振の快記録で快勝した。 ド派手な長打に頼ることなく、機動力で揺さぶり、全員でつないで相手を突き崩す野球。看板を背負う大谷にしても、好機に併殺を喫し、判断ミスをすることもある。だが、今のド軍には互いに補える力がある。「選手たちを称賛すべきだと思う。上位から下位までみんながいい打席にしていた」。試合後、上機嫌だったロバーツ監督の笑顔に、ド軍の新たな強さが映し出されていた。
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