「出生率の低下が非常に大きい。国全体で出生数が増えないと改善にはつながらない」。会議の副議長を務める増田寛也元総務相はこう語り、少子化の基調が変わらない現状に危機感を表明。従来の取り組みが「若者や女性にとって的を射たものかというと、違っていた部分もあったのではないか」と投げ掛け、対策強化を訴えた。ただ今回の報告書は「若年人口を近隣自治体で奪い合うかのような状況も見られる」と指摘。日本の総人口はこの10年間で300万人近く減り、コロナ禍での婚姻数の落ち込みを背景に、年間出生数は22年に80万人を割り込んだ。国立社会保障・人口問題研究所は17年に、80万人を下回る時期を33年と見込んだが、想定より大幅に早まった。
東京一極集中の是正も思うように進んでいない。政府は当初、地方と東京圏の転出入を20年に均衡させる目標を掲げたが、2度にわたり年限を先送りした。コロナ禍では一時、「3密」を避け東京都外に転出する動きも広がったが、東京都では最近、転入者数が転出者数を上回る「転入超過」がコロナ禍前に迫る水準となっている。今回の報告書は、10年間で239市区町村が「消滅可能性自治体」から脱却し、100年後も5割近い若年女性人口を維持できると見込まれる「自立持続可能性自治体」は65市町村であることも明らかにした。増田氏は、県内で12市町村が「消滅可能性」から外れた島根県を例に、「住まい確保や地域の(暮らしやすい)空気感など、自分たちでやればできることを考えて取り組んだのではないか」との見方を示す。
地方創生を受け、特に地方部の自治体は移住政策に力を入れ、小規模市町村を中心に人口流入が増える「社会増」を達成するケースも増え始めた。一方で、人口流出に依然苦しむ市町村も多く、この格差も課題だ。過疎対策に詳しい小田切徳美明治大教授は「先行して頑張る地域が『何に取り組んだのか』ではなく『どう取り組んだのか』を横展開し、国は地方への移住や関係人口の拡大へ音頭を取っていくべきだ。前向きな地域づくりが移住の増加や出生率向上につながってくる」と語った。
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