北朝鮮にも携帯電話は存在するが、海外との通話ができず、インターネットにも接続できないため、非常に使い勝手が悪い。中国との商売をするなら、国際電話ができて、制限付きながらインターネットに接続できる中国の携帯電話が必須アイテムなのだ。秘密警察の中枢である国家保衛省は今年9月初め、「11月まで中国の携帯電話使用者を根絶やしにするまで掃討作戦を行え」との指示を下した。会寧市保衛部の部長(トップ)は、「11月までに集中取り締まりを行え、実績のないものは郡部に異動させる」と檄を飛ばした。
保衛員たちは、会寧より貧しい郡部に左遷させられまいと実績を上げることに必死になっている。9月末には、韓国に住む脱北した家族からの仕送り1500元(約3万800円)を受け取ろうとしたとして、70代の老人を逮捕し、6カ月の労働鍛錬刑(懲役刑)を下した。社会的に敬われる存在である老人を逮捕するのは、保衛員の必死さを示す実例となっている。ある保衛員は先月24日、市内に住む40代女性のキムさんの自宅を訪ね、こんなことを言ったという。 「最近、あちら(韓国)とはうまく連絡が取れているか。生活に必要だろうから送金ブローカー業は続けよ。しかし、殺伐とした空気が流れる今、捕まれば大損をする。楽に商売したいなら(中国の)携帯電話は自首せよ。そうすれば、後で問題になっても自分がもみ消してやる」「中国の携帯電話を隠し持って使っているとの通報が入った。自分に渡せば問題なく処理してやる。今すぐが無理なら、何度か(韓国や中国からの)送金を受け取ってから渡せ」「携帯電話を提出して、カネは稼げなんて、お話にもならない」保衛員も、中国の携帯電話が商売に欠かせない必須アイテムであることくらい重々承知しているが、こんな矛盾したことを言わざるを得ないほど上からのプレッシャーが強いのだろう。
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