ここ1年のグーグルはOpenAIの会話型AI「ChatGPT」に対抗すべく、「Gemini」の開発に注力してきた。そしていま、仕事のタスクやプライベートなデジタル生活における日課を助けてくれる多機能な人工知能(AI)アシスタントとして、Geminiを世間に売り込んでいる。 一方でグーグルは、より専門性の高いAIツールの強化にも取り組んできた。そのツールは、すでに一部の科学者に欠かせないものになっている。 そのひとつが、アルファベット傘下でAIを手がけるGoogle DeepMindがタンパク質の立体構造を予測するために開発したソフトウェア「AlphaFold」だ。このほど、その性能が大幅に向上した。 AlphaFoldによって、生物学的に重要なほかの分子(DNAなど)のモデル化も可能になり、免疫系がつくり出す抗体と病原体の分子との相互作用もモデル化できる。Google DeepMindはそれらの新たな能力を「AlphaFold 3」に追加したわけだが、その際に画像生成AIの手法が部分的に貢献したという。 「これはわたしたちにとって大きな進展です」と、Google...
DeepMindはAlphaFoldのオープンソース版を公開し、誰でも使えるようにした。そこには人体に存在することが知られているほぼすべてのタンパク質を含む、35万のタンパク質の予測構造が収録されていた。そして22年には、200万以上のタンパク質構造が公開された。 さまざまなタンパク質をモデル化する最新のAlphaFoldの能力向上にひと役買ったのが、「拡散モデル(diffusion model)」と呼ばれるアルゴリズムだ。このアルゴリズムは、画像生成AIである「DALL·E」や「Midjourney」が奇妙な画像を生成したり、ときには写真のようにリアルな画像を生み出したりするプロセスに貢献している。 この拡散モデルをAlphaFold 3に応用したことで、ソフトウェアが生み出した分子構造が鮮明になる。この拡散モデルは、検証済みのタンパク質構造の集合を分析して拾い上げたパターンに基づいて、可能性の高そうなタンパク質構造を生成することが可能だ。これは画像生成AIが実物の写真から学習し、現実味のある写真を生成する方法を学ぶプロセスと同様である。 だが、AlphaFold...
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