まさに「安住劇場」だった。昨年12月に行われた第64回日本レコード大賞の司会者囲み取材。本番約1カ月前に、TBS安住紳一郎アナウンサー(49)と有村架純(29)がそれぞれ出席し、集まった記者達の質問に次々と答えていった。
会見では、媒体名と名前を言ってから質問するのが通例だ。質問される側も、どんな質問が来るのか集中しているため、媒体名や名前をいちいち気にしないことが多い。しかし安住アナは、媒体名1つ1つに反応。「あ、○○さん、いつもお世話になっております」。聞きなじみのないところには、聞き返して「どういう媒体なんですか?」と興味を示すなどして場を温めていた。すると安住アナが「性格的に、人の発言を遮って自分でしゃべるとか有村さんやらないからね。今スパルタでやっているのは、私がしゃべっていても、私を遮りながら、自分がしゃべり出すっていう練習しています。その一端をお見せしますから」。続けて「何でもいいので、私に質問してください」と番組のポロモーションスタッフに話を振った。安住アナが「やっぱりあれですね…」と語り始めるや否や、有村が「レコード大賞は、幼少期からみていたんですけど、浜崎あゆみさんとか倖田来未さんとか毎年、出られていたところをこたつに入りながらテレビで見ていたという思い出があります」とかぶせる寸劇のようなやりとりを披露した。見事なコンビネーションに、笑いとともに大きな拍手が沸き起こった。スタッフは、
コロナ禍で、レコード大賞の取材は対面形式では行われていなかった。特に司会者に関しては、TBSから司会者のコメントが載った資料が届くだけという形だった。そのスタイルでも記事は書ける。しかし、今回のようにふんだんに面白いポイントがちりばめられた会見になると、記者や会社のカラーで、使う部分も変わってくるだろう。視聴者を常に意識して番組作りをしている安住アナらしく、会見にもひとネタふたネタ用意して、読者を楽しませる工夫をしてくれたのではないかと想像できる。 会場を出るときに、普段あまりTBSを取材しない他紙の記者が言った。「安住さんすごいな~。これ毎朝やってんだもんな~」。以前、元TBSの堀井美香アナウンサーの取材に同席させてもらったときの言葉を思い出した。「オールマイティーにできる彼(安住アナ)以上のアナウンサーは、今後絶対出てこない」。柔らかい口調の堀井アナが、少し確信めいた口調で断言したのだった。初めての安住アナ取材で、その言葉の意味が少し分かった気がした。【佐藤成】
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