少しだけ上半身が前かがみになっているだけで(1)の構えは力みもなく、とてもリラックスしている。ここから(2)で左足を上げ、軸足に体重を乗せていくのだが、後ろの背景と比べても頭の位置はほとんど変わらず、しっかりと軸足に体重が乗っている。少しだけ前かがみになっていた上半身も、この時点ではまったく気にならない。おそらく、足を上げた形を想定して、構えの時点で上半身にブレが生じないようにしていたからだろう。
踏み込んだ左足の位置もいい。(3)では構えた位置から1足分ぐらいスタンスが広くなっただけ。下半身が投手側に向かってスライドするように回り始めているが、左肩は開かずにしっかりと我慢できている。この下半身の動きが上半身をリードして打ちにいっているのが(4)の形。(5)ではバットのヘッドが後方に残るように体に巻き付くような軌道で出ていっている。やや左脇が空いているように見えるが、(6)で写っているボールの位置を確認すると、高めのボールゾーンギリギリの高さ。この高さであれば、(6)のように左脇に余裕がなければ打てないし、理想的なスイング軌道で打ちにいっている。 ただ、(7)から(8)にかけてのバット軌道は、少しこねるような打ち方になってしまっている。しかし昔の打撃理論は、このようにポイントを前にしてバットのヘッドを返して当てるようなフォームが主流。それに加え、打ちにいった球が高めの球だっただけに、(9)と(10)のような窮屈なフィニッシュになってしまったのだろう。
昔と今では打撃理論も違い、私の解説が昔の選手に当てはまるとは思いません。しかし、構えからインパクトまでの柔らかさは、間違いなく現代野球でも通用する技術があります。そして何より、大島さんは私と同じで“遅咲きのスラッガー”でした。考えて考え抜いた結果、素晴らしい成績を残されたのだと思います。イメージとしては、いつも明るくて周囲をリラックスさせてくれる雰囲気を持っている方でした。心からご冥福をお祈りします。(日刊スポーツ評論家)
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