文部科学省が9日に結果を公表した令和5年度「英語教育実施状況調査」では、子供たちの英語力の底上げが明らかになったが、地域差は解消されておらず、伸び悩む自治体を国がサポートする必要性が浮かび上がった。外国語学習との親和性が高い生成人工知能(AI)の活用も英語力向上のカギとなるため、本格的に授業に導入する工夫が求められている。さいたま市は指導の重点化によって手厚い授業時間を確保。全国2位の福井県(83・8%)も教員間で効果的な指導法を共有するなど、「英語力を伸ばすノウハウは明らかになっている」(文科省教育課程課)。
政府の計画では、英検3級相当以上の中学生の割合を、全ての都道府県・政令市で5割以上とすることが目標とされている。文科省は英語力の高い自治体の取り組みを全国的に広げる一方、「足らざる部分がある自治体に伴走して個別に支援する」(担当者)ことで目標達成を目指す。 今回の調査結果では、より高度な英検2級相当以上の英語力を持つ高校3年の割合が19・8%だった。グローバル社会で活躍する人材となることが期待されるレベルでもあり、この割合を高めることに日本の英語教育の真価が問われている。 東京外国語大大学院の投野由紀夫教授(英語教育学)は「小中高の連携にかかっている」と指摘する。投野氏によると、小学校で習った英語を文法も含め再整理して土台を強固にし、さらに上乗せするのが中学校の役割となる。この小中連携が成功すれば、高校の英検2級相当レベルの達成は夢ではないとする。
投野氏は「急速に普及した『チャットGPT』などの生成AIも子供たちが個別に英語コミュニケーションの練習相手になる」と述べ、英語学習のデジタルトランスフォーメーション(DX)化の必要性を強調。その上で、「AIの具体的な活用は次の10年の流れを決める重要な施策の柱となる」と語った。(玉崎栄次)
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