中国人の漁民2人が2月中旬に死亡した事件をめぐり、台湾では与野党間の政治闘争が続いている。一方、中国政府は事件を利用して、福建省の厦門(アモイ)から数キロの距離にある金門島周辺での「グレーゾーン」戦略をエスカレートさせようとしている。中国側は事件発生直後、比較的控えめな対応だったが、4日後の2月18日になって金門島周辺海域の巡視活動を強化すると発表。翌日、中国海警総隊は初めて台湾観光船の臨検を実施し、30分後に金門島への帰港を許可した。
注目すべきは、中国がこの発表まで数日かけたことだ。事件に対する最初の注目の波が去るまで待っただけかもしれないが、問題の漁船は明らかに台湾側が設定した金門島周辺の「禁止海域」に侵入していた。中国政府としては、同様の侵犯行為をしても政府が後ろ盾になってくれると民間の漁民に思わせたくなかった可能性もある。 グレーゾーン戦略の強化は民間ではなく、国家主導で行うことを望んでいる可能性もある。いわゆる「仮想敵」との衝突で人命が失われた今回の事件は、地域の緊張を高めかねない。国内のナショナリズムに火が付けば、中国政府はもっと強力な措置に出ざるを得なくなるかもしれない。2023年2月、台湾と馬祖島を結ぶ2本の海底ケーブルを中国漁船が切断する事件があった。単なる事故だった可能性もあるが、馬祖島のインターネット接続はほぼ遮断され、民間船舶による敵対行為の脅威が議論されるようになった。実際、中国の「軍民融合戦略」に対する懸念は、ここ数年高まっている。
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