ビル・クリントンは米大統領在任時に中国のWTO加盟を後押ししたとき、加盟が実現すれば中国に「内側から」変化をもたらすと言った。WTOの一員になることで中国は、アメリカ製品をより多く輸入するだけではなく、「民主主義の最も重要な価値観の1つである経済的自由」も受け入れる──。2001年のWTO加盟から20年がたった今、中国は予測以上の経済成長を遂げた。だが、民主主義に移行したとは到底言えない。アメリカの指導層は「経済の自由が政治の自由につながる」という前提に自信を失い、今では欧米の民主主義国が中国の影響を受けることを危惧している。中国もおおむね、これと同じ世界観のようだ。欧米の人権重視の姿勢を、自国の政治的安定に対する脅威と見なしている。
アメリカは慎重になるべきだろう。今や中国は超大国で、その経済は世界の成長と繁栄を支えている。中国の体制が根本的に変化するようなことがあれば、平和的な移行にはならない可能性がある。そうなれば、影響は世界中に及ぶ。中国共産党は権力の独占など自らの目的に沿う形で、ある種の資本主義を使うことに成功している。経済成長は一党独裁制に、政治学者のサミュエル・ハンチントンが言う「業績に基づく正統性」を与えている。しかし一方で、経済の急激な減速が起きれば、この状態が覆ることもあり得る。 経済運営がこのまま成功することが、共産党にとって問題となる可能性もある。アメリカの指導層が抱く「経済的自由が独裁制を弱める」という前提は、あながち間違いではない。かつてスペインのフランコ独裁政権では、まさにそうしたことが起きた。経済的繁栄と国外との接触の増加は、専制国家の内部に不満を蓄積させることがある。
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