「私が10代のとき(F1マシンの設計者だったゴードン・マレイが1992年に手がけた)マクラーレンF1を見て、並外れていて、ものすごく新しくて、なににも似ていないデザインに興奮しました。そのあと、95年のF1 LMもすばらしかったです」
マクラーレンといえば、1966年から参戦したF1グランプリでの好成績ぶりが知られている。日本では、90年代前半のホンダエンジンを得て、アイルトン・セナのドライブによる破竹の進撃でいちやく名を知られたのだった。直近では、2024年のモナコGPで1位を獲得したのが記憶に新しい。66年にはF1と同時に、この年から立ち上がったカンナム(Can-AM=カナディアン-アメリカン・チャレンジカップ)シリーズにも参戦。そこでも創業者のニュージーランド人ブルース・マクラーレンみずから操縦するなどして優秀な成績をおさめた。カンナムのM1AからM6Aにいたるレーサーもまた、シュールマン氏にとってのインスピレーションの源泉になっているのだそう。「パフォーマンスを追求した設計と究極のドライビングポジション、優れた視認性といったマクラーレンのレーサーの要素はいまも重要です。テクニカルな要素を前面に押し出し、デザインとエンジニアリングの融合を実現してきたのがマクラーレンです。(カンナム・レーサーのように)必要な要素のみでデザインした真空成型のボディには、究極のパフォーマンスの追求とともに審美性を感じます」並外れたを
具体的には、フロントの2つのエアインレット、フロントフェンダーを強調しコクピットの背後で跳ね上がっていくパフォーマンスライン、大きな開口部から空気を吸い出すオープンリアエンドが、カンナム・レーサーの時代から最新の750Sにいたるまで、マクラーレン車を特徴づけてきたという。それをこれからも意識するという。 インテリアについても同様。コクピット感を意識させ、スペースは確保し、乗員を取り囲むようなラップアラウンドデザインを継承するんだそう。「究極のドライビングポジション、優れた視認性。アナログとデジタルが完璧に融合したインフォテインメントシステム。触れるもの、見るもの、感じるもののすべてがドライビング・エクスペリエンスに直結」することをめざすそう。さらに、ユニークな試みを実行します、とシュールマン氏。「新車の開発において最初のスケッチの段階から、エンジニアリングとエアロダイナミクス、各部署が参加するのです」という。
「形態は機能に従う、などと言われますが、それを信じていません。マクラーレンでは、エンジニアリングが優先で、あとでデザイナーが外皮をかぶせるとか、あるいはデザインが優先とか、そういうやりかたは排除して、ひとつのチームとして開発に当たります。週ペースでミーティングを開き、課題の解決に当たるし、ときとしては、F1のエンジニアから薄いカーボンファイバーなど、新しい技術の提案を受けることもあります」