総裁を押しのける形で総裁選に出馬し、「平成の明智光秀」と呼ばれたことになぞらえて、「令和の明智光秀」と表現されることがある。しかし、本人は戦国武将でいえば、明智光秀ではなく、「織田信長タイプ」。ホトトギスが鳴くまで待てないし、ホトトギスを無理やり鳴かせることもしない。“極めて合理的”な茂木氏が、この句を詠むとしたら「鳴かぬなら 代えてしまおう 別の鳥」。
一方、茂木氏の合理的な判断が、永田町の世界では「冷たい」「人望がない」と受け取られてしまうことも多い。岸田総理や官邸との溝が深まるにつれて、党内では茂木氏の一つ一つの決断に、本人の思惑以上の陰謀論が囁かれる状況になっていた。茂木氏が敬愛する作家・塩野七生氏が著書の題材にしたこともある、イタリア・ルネサンス期の政治思想家、マキアヴェッリ氏の言葉に「自己の戦力に基礎を置かない権力の名声ほど不確かで不安定なものはない」「君主にとって必要なものは良き土台である」とある。 総裁への道のりで、茂木氏にとって“土台”となる自身の政策集団、平成研をまとめきれるかは、大きな課題の1つだ。ある平成研幹部は「今はみんな様子見をしている。茂木さんが幹事長でなくなれば、ぽろぽろ抜けていく可能性がある」と茂木氏の“土台の弱さ”を指摘する。特に平成研に所属する参議院側との確執は大きく、参院中心に一定の勢力が「将来の首相候補」として推していた
氏が、事前の相談なく平成研を抜けた時には、それに乗じて関口昌一氏が参院全体で平成研から抜けることを画策した。そんな平成研の状況に、永田町のキングメーカー、麻生氏をよく知る議員は「麻生さんが茂木さんのずば抜けた頭脳を認めているのは間違いない。でも自身の派閥をまとめきれなくなったら、総裁選の時は見捨てるよ」と話す。また最近、“土台の拡張”を意識してか、茂木氏は平成研に限らず、これまで関わりのなかった中堅・若手議員とも飲みに行く機会を増やしている。幹事長という自民党を取り仕切る立場がゆえ、強権的なイメージが先行し、「素顔が知られていない」との課題を自覚するためだ。飲み仲間は、永田町界隈だけに留まらず、20代の若手経営者らとも積極的に懇談を行い、こうした機会が自身の政権構想を考える際の発想力に繋がっている(茂木氏側近)という。実際、いま議論されているライドシェアなどシェアリングエコノミーの導入はすべきとの立場で、選択的夫婦別姓などリベラルな政策にも理解が深い。茂木氏は自身を支える議員らに「今後政治家として目指すポストはもう1つしかない。そこに勝負するか、もしくは政治家を辞めるか、二択なんだ」と
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