【ワシントン=坂本一之】民主党のバイデン大統領(81)は21日、東部ニューハンプシャー州で演説し、2022年に署名して成立させた退役軍人の健康支援に関する法に基づき「約100万件の申請を承認した」と訴え、11月の大統領選で共和党のトランプ前大統領(77)が重視する軍人票の切り崩しを図った。本選での接戦が予想される中、勝敗を左右する接戦州だけでなく地方を行脚し支持層の票固めに奔走している。
バイデン氏は21日、近年の大統領選で民主党候補が優勢な東部の2州で遊説した。ニューハンプシャー州で退役軍人の有毒物質による健康被害を支援する政策の実績をアピールしたのに続き、マサチューセッツ州では「トランプは米国を導くためでなく仕返しのために出馬している」と主張し、その政治姿勢を非難した。ニューハンプシャー州は04年大統領選から民主党候補が連勝しているが、米メディアによると、20日発表の世論調査でバイデン氏に投票するとの回答は36・5%にとどまり、トランプ氏の36・6%を下回った。 接戦州で善戦しても、こうした州を取りこぼせば再選は遠のく。特にニューハンプシャー州は、民主党全国委員会が11月の本選に向けた党予備選の初戦地をバイデン氏の意向に沿って同州から変更したこともあり、これに反感を抱いた党員との関係は良好とはいえない。テコ入れは喫緊の課題だ。
また、バイデン氏が注力するのが、前回の20年大統領選で勝因の一つとなった黒人票の獲得だ。今月17日、首都ワシントンの国立アフリカ系米国人歴史文化博物館で、有力な黒人団体「全米黒人地位向上協会(NAACP)」の幹部らを前に演説。「黒人の歴史は米国の歴史だ」と語り、教育格差の是正など黒人層に寄り添う姿勢を訴えた。19日には南部ジョージア州を訪れ、歴史的に黒人の多いモアハウス大の卒業式で演説した。イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの交戦でパレスチナの民間人犠牲者が増え続けることへの抗議デモが学生の間で広がったことを踏まえ「あなたたちの声を聞くと約束する」と呼びかけた。 民主党の支持層である黒人票を巡っては、返り咲きを目指すトランプ氏が切り崩しを狙っており、バイデン氏が阻止できるかが焦点だ。FOXニュースが15日に報じた世論調査では、バイデン氏は黒人有権者の72%から支持を得ているものの、トランプ氏を制した前回の大統領選直前に記録した79%に届いていない。
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