「ハコベやナズナが生えている。いい土だ」。2月、青森県東北町にある東北牧場の柏崎一紀牧場長(42)は、少し雪の残ったタマネギ畑を満足そうに見つめた。自生した野草の種類から土の状態を確認し、堆肥の量を調節する「昔なら普通の方法」で畑を整える。(共同通信=赤羽柚美)
牧場では、全国でも珍しいというサラブレッド生産・育成と農業の「循環」に取り組んでいる。馬ふんや敷き草で作った堆肥を畑にまき、野菜と一緒に育った野草は飼料として馬の体内に戻る流れだ。無農薬野菜の安全性や、環境負荷の軽減を重視している。循環型農業を始めたのは1987年で、最初は自分たちが食べる分だけだった。それが近所でおいしいと評判になり、生産規模を徐々に大きくした。 畑の約4割を占めるのは人間が食べる野菜ではなく、ニワトリの飼料にするデントコーン。約800羽を日当たりのいい鶏舎で自由に動けるように飼育している。柏崎さんによると、卵は民間検査機関によって「世界で唯一、残留農薬ゼロが証明された」という。ニワトリのふんも堆肥に混ぜる。
他にもナガイモ、ダイコンなど約80種類を作り、卵と共に東京にある系列ホテルのレストランなどで提供。インターネットでも販売している。柏崎さんは「組織がしっかりとした、野菜本来の主張が強い味だ」と太鼓判を押す。 レストランの料理長らが畑まで来て生産量を調整することで、フードロス削減にも気を配る。「循環型農業は100年後もずっと続けていける方法だ。地球や次の世代への責務を果たしたい」と柏崎さん。これからも土と向き合い続ける。
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