一方そうした企業利益増加は、２２年初め以降のユーロ圏における物価上昇に対する寄与度がほぼ５０％に達したことが、国際通貨基金（ＩＭＦ）で分かる。この間の労働コストの物価上昇寄与度は２５％に過ぎない。ユーロ圏の物価上昇率はピーク時に１０．６％を記録した。世界中で何百万人もが感染症で死亡し、多数が日々の支払い負担が増大する中で、企業だけがより元気になる状況に、当然ながら社会の風当たりは強くなった。ボブ・ケーシー米上院議員などの政治家は企業が便乗値上げをしていると糾弾。オックスファムは企業利益の水準を「法外」と呼び、懲罰的な課税を要求したほか、ギリシャ政府は消費者保護のために小売業界の利益率に上限を設定しようとした。
そして中銀までもがこうした政治の領域に足を踏み込みつつある。一連の急激な利上げや経済の自律的な調整を通じて足元の物価全般の上昇率は鈍化したが、長らく停滞していた賃金の伸びは加速している。例えば２月の米国の平均時給は前年比４．３％増と、ＦＲＢが目指す２％の物価上昇率に見合う伸びを大きく上回る。このためパウエル氏やラガルド氏、イングランド銀行のベイリー総裁らは、さらなる給与の増加は、企業や株主がある程度負担を引き受けない限り、喜ばしくない形でインフレを再燃させると警告した。Reuters Graphics Reuters Graphics 実際ユーロ圏では企業の収益力の尺度となる限界利益が２２年第４・四半期に前年比９．３％増加したが、バンク・オブ・アメリカのアナリストチームの分析では昨年末までに前年比３．３％減少に転じ、それに伴って物価が押し下げられてきた。
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