あのノルマンディー上陸作戦を描いたハリウッド映画『史上最大の作戦』(1962年)で有名になった言葉だ。そう、「砂漠の狐」と呼ばれた名将ロンメルは知っていた。攻勢においては緒戦でその後の展開が決まり、勝敗も、敵に与える戦略的打撃もそこで決まるのだと。
ウクライナ軍がいつ、どこを攻めるか。どれだけの兵力を用意できるか。西側の供与した新たな兵器がどれだけ役に立つか。そうした議論や臆測は山ほどあるが、確かなことを知り得るのはウクライナ軍の上層部のみ。火力や弾薬数、兵員数、前線への補給態勢でウクライナ軍が確実にロシア軍を上回っているかどうか、私たちが知るすべはない。ただ分かっているのは、この戦争がますます消耗戦の様相を強めていること。どちらの側にも決定力はなく、ひたすら相手の消耗を待っている。相手の虚を突く戦術 反転攻勢の緒戦でウクライナが消耗戦の泥沼を回避する道は、おそらく1つしかない。ロシア軍の指揮命令系統を麻痺させ、現場のロシア兵にパニックを起こさせることだ。彼らが戦闘を放棄して逃げ出すようなら、この戦闘は大成功となるだろう。
たとえ装備の質や兵員の数でウクライナ側が勝っていても、それだけでこうした成果は得られない。決め手となるのは戦術的サプライズと戦場でのリーダーシップ、そして戦う者の士気の高さだ。この3つがそろえば、最初の24時間を制することができよう。 この3つの要素に最新鋭の武器が加われば、ロシア兵をパニックに陥れ、その指揮命令系統を麻痺させ、一時的であれ破壊することも可能だ。具体的に言えば、まずはウクライナの機甲部隊が敵の重層的な防御網を突破し、速やかにロシア軍の後方に回り込む。そして前線基地や補給拠点などの指揮命令系統を脅かす。そうすれば、パニックと麻痺が拡散する。
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