眠れないのは、就寝時の環境のせいかもしれない。ひとつは青色LEDで、寝る前にiPadを2時間使うと(入眠作用のあるホルモンである)メラトニンの分泌が23%も抑えられる。寝室にはスマホなどを持ち込まず、暖色の灯りを使い、寝ているあいだは遮光カーテンで部屋を真っ暗にするといい。どうしても目覚まし時計に頼らなくてはならない場合でも、スヌーズボタンは使わない方がいい。短時間のあいだに何度も目覚ましで起こされるのは、そのたびに心臓にショックを与えるのと同じで、「これを週に5回のペースで長年続けていたら、一生のうちに心臓や神経系がどんなにダメージを受けるか想像に難くないだろう」と、睡眠研究の第一人者マシュー・ウォーカーは不穏な警告をする。
人類はアフリカ東部の赤道付近で進化したが、そこは年間を通じて平均気温の変化がほとんどないものの(プラスマイナス3度ほど)、夜と昼の寒暖差は大きく、冬は8度、夏は7度の差がある。わたしたちはこのような環境で眠るように進化してきたのだから、セントラルヒーティングやエアコンによって管理された室温は暖かすぎる。「ほとんどのひとにとって、理想的な寝室の温度は摂氏18・3度」とのことなので、寝室の温度を下げるとよく眠れるようになるかもしれない。現代社会では朝起きたら夜まで寝ないのがふつうだが、これは工場労働に合わせた近代の習慣で、狩猟採集社会を見れば、昼に短い睡眠をとる「二相睡眠」が進化の適応であることがわかる。スペインやギリシアなどの南欧では最近まで昼寝(シエスタ)の習慣があり、それをやめたところ、心疾患などが急増したとの報告もある。これはなかなか難しいだろうが、昼食後に60~90分の午睡をとるようにすれば眠りのパワーをさらに引き出せるだろう。
熟睡のためのテクノロジーも次々と開発されている。全身の温度をパーツごとに上げ下げできる「睡眠スーツ」を装着し、手足の体温をわずかに上げる(0.5度)と、その部位の血流が増して身体内部にたまっていた熱が放出され、健康なひともふだんより20%早く寝つけた。就寝のすこし前に風呂に入るとよく眠れるのも同じ理由で、健康な大人で深いノンレム睡眠が10~15%増えたという研究がある。入眠時だけでなく、ひと晩にわたって体温が下がるように調節したところ、不眠症患者が熟睡できるようになり、睡眠の質も上がったという。 日中の運動は睡眠を促す効果があるが、眠る直前に運動すると体温が上がってしまうため、逆に眠りにくくなる。過度なダイエットは眠るのを難しくし、深いノンレム睡眠も減少する。炭水化物が摂取カロリーの70%を超えると、眠りに悪い影響が出るという研究もある。わたしたちは昼間のぼーっとした時間に、睡眠時の処理に備えてさまざまな「気になること」をタグ付けしている。ところがスマホなどによってマインドワンダリングする時間がどんどん少なくなると、このタグ付けができなくなる(ぼーっとするのは「生産性が低い」のだ)。
ウォーカーは、じつはこれが不眠症が増えている理由のひとつではないかという。ベッドに入ったとたんに心配事が一気に押しよせてくるのは、昼間の時間に「気がかり」を処理できなかったからで、入眠前が「記憶の識別と標識づけという大事な作業ができる唯一の時間」になってしまうのだ。
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