ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長の執務室には、「店は客のためにあり 店員とともに栄える」という言葉が掲げられている。これは経営指導者・倉本長治の格言だが、この言葉には続きがある。『店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる 倉本長治の商人学』(プレジデント社)の著者で、『商業界』元編集長の笹井清範さんが解説する――。※本稿は、笹井清範『店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる 倉本長治の商人学』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。■縦割りの組織構造を変えていく2017年3月16日、ファーストリテイリングは2月から稼働した有明の新社屋Uniqlo City Tokyoで「有明プロジェクト」の取り組みを発表した。柳井正代表取締役会長兼CEOは、自社の事業をこれまでの製造小売業から「情報製造小売業(=Digital Consumer Retail...
店員とともに栄える」に、この一文を加えて完成する。柳井会長は「もちろん、自らの戒めとして常に心にとどめている」という。その表れの一つが「有明プロジェクト」なのである。柳井会長が正しさにこだわるのは、「正しくなければ、商売をする意味がないから」という。なぜなら、「企業は社会の公器であり、お客様や社会に自分たちが提供できるもの、提供すべきものは何かを考えてこそ存続を許される」と柳井会長は明言する。このとき、倉本長治の盟友であり、ともに経営指導に半生をかけた指導者、新保民八の次の言葉を思い出す。正しきに拠りて滅びる店あらば滅びてもよし■革新的であっても、原理原則を無視すれば滅ぶ正しさこそ事業の事業を通じて実現すべき命題だと新保は指摘する。しかし、単に正しいだけでは企業の永続性は保証されず、過去に多くの企業が市場から消えていった。じつは、新保は次のように言葉を続けている。古くして古きもの滅び新しくして新しきものまた滅ぶ古くして新しきもののみ永遠にして不滅「お客様のニーズは常に変わり続けています。とくに今からの変化はさらに激しいでしょう。いくら正しくても、現状に固執していては生き残ることはできま
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