部下に「退職する」と言われると、上司はついつい引き止めてしまいがちだ。その際に良かれと思って好条件を出しても時すでに遅し。辞めそうな部下の兆候と引き止めのタイミング、そして部下を気持ちよく送り出すために必要な「上司力」とは。本稿は、新田龍『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を抜粋・編集したものです。経験上、痛感するのは、採用面接で応募者は前職の離職理由について建前しか語らず、それは本音とは大きく乖離していることがほとんど、という事実です。
建前の離職理由として一般的なのは、「もっとキャリアアップしたい」「会社の経営方針/経営状況が変化した」「親/家族の介護のため」などが多いのですが、本音を突き詰めてみると極めてシンプルな理由に辿り着きます。その理由とは、・人間関係の不満・仕事が合わない・労働条件が悪い の3つ。 この手の調査において、我が国で最も広範、かつ母数の大きいもの(平成30年度調査では調査数約3万人、有効回答数約2万人)として厚生労働省「若年者雇用実態調査」が存在しますが、こちらにおいても離職理由の上位は「労働条件」「人間関係」「仕事内容」と、まったく同じ結果が出ています。上司からすれば、自分の部下が辞めるとなると、異動や新規採用によって代わりの労働力を投入するなどの対処が必要になるため、大問題です。そのため、好条件を出して、部下を慰留することもしばしばおこなわれます。
一般的によく提示される条件としては「将来のキャリアパスを示す」「報酬アップや福利厚生の見直しを提示する」「労務負荷を軽減し、ワーク・ライフ・バランスを促進する」「新たなプロジェクトや責任あるポジションを割り当てる」「コミュニケーションとフィードバックを強化する」などが挙げられます。
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