西九州新幹線「かもめ」は、博多~武雄温泉間を在来線特急「リレーかもめ」で結び、武雄温泉~長崎間は新幹線「かもめ」が結ぶ、「対面乗換方式」が採用されたちょっとユニークな新幹線。在来線と新幹線の乗り換え駅となる武雄温泉駅では、「リレーかもめ」と新幹線「かもめ」がスムーズに乗り換えられるように同一ホームで双方を行き来できるようになっている。
885系は現在、在来線を走る特急「かもめ」の一部に使用されており、西九州新幹線が開業する9月23日以降、特急「かもめ」はその使命と列車名を西九州新幹線にバトンを渡し、引退する。885系は今後「リレーかもめ」などに使用される。そんな885系に乗って、しばし長崎本線と佐世保線を走り、ほどなくして武雄温泉駅に到着。向かいのホームには真っ白な新幹線「かもめ」がすでに入線しており、乗り換え客を待っている。実際の営業運転ダイヤでは「リレーかもめ」と新幹線「かもめ」の乗り換え時間は「3分」に設定されており、途中下車せずに通しで利用する場合は、一枚のきっぷとして販売される。 また、指定席、自由席の号車も「リレーかもめ」と新幹線「かもめ」でおおまかに合わせられているので、乗り換え時にホーム上を延々と歩く心配はない。とはいえ、一度下車しての乗り換えとなるので、小さな子ども連れや大きな荷物を持っての旅行の場合は、なるべくドア付近の席を予約しておくとより安心だ。西九州新幹線「かもめ」は6両編成で1~3号車が指定席、4~6号車が自由席で運行される。1~3号車は東海道新幹線や東北新幹線などに見られる2+3の座席配列ではなく、2+2配列のゆったりレイアウト。座席のデザインも自由席のものとは異なる上、号車ごとにシートカラーが違っているこだわりよう。この車両をデザインしたのはJR九州の観光列車「D&S列車」など、数々のユニーク列車を作り上げてきた水戸岡鋭治氏。新幹線「かもめ」に使用されている車両はN700Sという車両で、現在では同じ形式が東海道・山陽新幹線でも走行しているが、そのN700Sとは似て非なるもの。
「新幹線車両はとにかく制約が大きく、なにか工夫しようとすると予算も規則も重量もオーバーしてしまう」とのことで、氏がデザインする他列車に比べると内装こそインパクトを抑えて、既存のN700Sのニュアンスを感じるが、外装はかなり「攻めた」デザイン。ベースは他の新幹線にも採用されている白だが、「白の中でも純白に近い白を採用した」というボディは大きな「かもめ」の文字と合わさって存在感も抜群だ。さあ、新幹線「かもめ」に乗り換えて、いよいよ長崎駅を目指して出発!今回は対面乗り換えも体験したが、同一ホームということもあり、乗り換えはスムーズという印象。在来線から乗り換えると、新幹線の乗り心地の良さを特に感じる。西九州新幹線は線路も車両も新品そのものだからなおのこと! まさに出来立ての線路の上を、すべるように走る乗り心地。
途中駅は「嬉野温泉」、「新大村」、「諫早」の3駅。これに「武雄温泉」、「長崎」を加えた、合計5駅が西九州新幹線の駅だ。他の新幹線に比べて駅間は短いものの、加速力のよいN700Sは、スムーズな高加速で、短時間で高速域まで加速する。先を急ぐ新幹線は各駅をなるべくショートカットして走るために、どうしてもトンネルが多くなってしまうのが少々残念。さらに特急「かもめ」がこれまで走ってきた長崎本線は、有明海に沿うようにして走っているため、車窓も絶景ということで、よく「西九州新幹線になって車窓が残念……」と言われがちだが、西九州新幹線が開業する9月23日には、新幹線と同時に、特急「かもめ」が走ってきた長崎本線と大村湾の風景が楽しめる大村線を走る、新しい観光列車(D&S列車)「ふたつ星4047」がデビューするので、こちらも楽しみに待ちたい。
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