寡黙な男が首位陥落を防いだ。阪神シェルドン・ ノイジー 外野手(29)が土壇場の9回に勝ち越しの左前適時打を放って試合を決めた。1軍昇格の井上が即5番左翼でスタメン出場。ベンチスタートとなったが、燃え上がる思いをボールにぶつけた。チームの連敗は2でストップしたが、2位巨人も勝利したため、0・5ゲーム差は変わらず。1歩も引けない5月戦線が続く。シーソーゲームに、 ノイジー がケリをつけた。同点の9回1死一、三塁。森原から放った低弾道のライナーに、三塁手京田のジャンプは届かない。左翼の芝を跳ね、三塁走者は悠々と生還。ハマスタに響く虎党の大歓声を浴びながら、塁上では両手を激しくたたき、盛り上がる三塁側ベンチへ右手人さし指を向けた。カウント2-1から、内角の147キロ直球をミート。高まるボルテージの中でも、心は冷静だった。今季、横浜では6打数4安打の6割6分7厘。横浜の心地よい風が追い風になる。
燃えるものがあったはずだ。この日は5番左翼で井上が先発し、6回守備からの出場。それでも7回に第1打席が回ると、いきなり右前への二塁打で出塁した。「先発じゃない以上、自分の中で考えをまとめる時間があった。心も体もいろいろ考えながらゲームに入れた」。置かれた立場でベストを尽くし、今季4度目のマルチ安打を決めた。 来日2年目。米国出身の助っ人は家族旅行などで日本を巡る中、最も印象に残っている場所がある。「広島だね。原爆ドームに行った時とか、戦争に関することはすごく印象に残っているよ」。歴史を学ぶため、昨年家族で訪れた。日本の文化を学ぶ上では大切な過去。日本を学び、日本人のメンタリティーを学びチームへの貢献を続けている。
これでチームの連敗もストップ。2位巨人が勝利したため、0・5差のまま首位をキープした。岡田監督は「まあ、あれはたまたまやけどなあ、それはもう巡り合わせだからそらしゃあないもん」と周囲を笑わせつつ「あそこで打ったいうことはやっぱりなあ、そこで打ったいうことはやっぱりなあ」と仕事ぶりに目を細めた。 11日は再びベンチスタートとなる見込みだが、指揮官の言葉はどの立場でも集中力を発揮する、信頼の証だ。ヒーローインタビューでは「このいい流れというのを引き続き継続したい。3連勝できるように頑張っていきたいと思います」と宣言。心は熱く、寡黙な助っ人が活躍を続ける。【波部俊之介】
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