■弟の夢は「警察官」残された家族は 「とても仲がいいきょうだいでした。当時3歳だった息子は、なぜリンちゃんがいなくなってしまったのかよくわかっていませんでした。息子は、いつもリンちゃんが学校から帰ってくる夕方になると玄関で待っているんです。リンちゃんの写真を抱えながら、私に『お姉ちゃん、なかなか帰ってこないね』と。声をかけられるのがつらかったです。
街でリンちゃんと同じくらいの子が歩いているのを見かけると『あれ、お姉ちゃんじゃない?』と言い出すこともありました。リンちゃんのことがあったので、人を守れる人になりたいからと、小さい頃は『将来は警察官になりたい』とも言っていました」 リンちゃんの弟の当時の様子を涙ながらに語ってくれたのは、母親のグェンさん。今から7年前の3月、千葉県松戸市の小学校に登校途中だった娘のリンちゃん(当時9歳)を亡くしました。リンちゃんを殺害したのは、通っていた小学校の保護者会会長の男でした。 日本は安全な国だと信じていた──。グェンさんは娘を失ったショックから、事件後しばらくの間、ベトナムに帰っていたといいます。 「毎日、悲しみに打ちひしがれていました。息子のことも心配だったので、しばらく私と息子はベトナムの実家に戻って生活していました。でも、事件への対応や日本での夫の仕事のこともありましたし、子どもたちが生まれ育った幸せな思い出がたくさんある日本でまた頑張ろうという気持ちで、半年ほど経ってから日本に戻りました」
リンちゃんの家族は、千葉県松戸市でベトナム料理のレストランと食材店を開きます。店のオープンは、亡くなったリンちゃんの夢を叶えるためでもありました。 「リンちゃんは日本が大好きで、将来は日本人の友達をベトナムに連れて行って、ベトナム料理を紹介して食べさせてあげたいと言っていました。それに、ベトナムにいる親戚にも、日本の料理や景色を紹介したいといつも話していました。リンちゃんの夢を叶えたいという気持ちから、親としてできることをしようと思っていました」
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