先発投手の勝利投手の権利は原則、味方がリードし、5回を投げ切って得られる。東大1回戦で先発した立大・池田陽佑は5回裏一死二、三塁で降板した。人差し指のマメがつぶれるアクシデントによる、無念の交代だった。立大は6回表、渡部に代打を出したため、9球のショートリリーフで役目を終えた。立大は6回以降、3投手が2イニング、1イニング、1イニングを無失点でつなぐ。安藤碧のリーグ戦初本塁打に続く2本塁打など15安打で、9対2と先勝した。立大は今秋、開幕から4カード連続で勝ち点を落とし、8連敗で東大戦を迎えていた。勝ち点0同士の直接対決。チームとしても、今季初勝利。渡部は正直な思いを口にしている。
「勝利投手というのは、考えていませんでした。アップアップしがちなので、落ち着いていこうと思っていました。狙いを定めて、捕手のミットをめがけて投げる。向こうの応援がすごかったので、流れをいかせないようにしました」「チームとして1勝目。池田が先発したので、池田につけさせてあげたかった。池田が頑張っていたので、申し訳ない。ただ、池田が先発した試合で勝てたのは良かった。試合に出ている4年生は少ないですが、4年生としての責任感がある。チームで勝とうと言ってきた中で、4年生が中心に頑張って、1勝できたのは大きいです」渡部は中学時代に侍ジャパンU-15代表でプレーした逸材だった。春日部共栄高では、3年夏の北埼玉大会初戦敗退。「野手で入っていました」と、背番号13を着け、代打1打席で最後の夏を終えている。「東京六大学で野球がしたい」と、1浪を経て、一般入試で立大に入学した。
高校で1学年後輩の明大の右腕エース・村田賢一は、大学で同学年となった。今春までリーグ3連覇に貢献した後輩はリーグ戦通算15勝。「村田に負けないように、切磋琢磨してきました」。4年春にリーグ戦デビューの苦労人。今春から中継ぎ、ワンポイントでブルペン待機し7試合に登板し、ベンチの信頼をつかんでいった。 木村泰雄監督代行は「これまではリリーフで白星がつくチャンスがありませんでしたが、良いところで良い結果を出し、白星がついて良かったです」と笑顔を見せた。渡部は「夢にも思わなかった……」と、あらためて勝利投手の喜びをかみ締めた。競技者としてプレーするのはこの秋が最後。大学4年間の努力の末、神宮で最高のご褒美を手にした。
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