与党大綱を見ると、令和6年度税制改正の基本的な方針として、「30年ぶりの高水準の賃上げ、過去最大の民間投資など、日本経済は明らかに動き始め、デフレ脱却・構造転換に向けた千載一遇のチャンスを逃さぬよう、この動きを止めることなく、より多くの方が享受できるようさらに拡げていく必要がある」としています。そして、まずは物価上昇を上回る賃金上昇の実現を最優先の課題としてあげています。
しかし実際の経済は、賃金上昇→消費拡大→投資拡大の好循環の実現にはまだ至っておりません。その為、デフレに後戻りさせないための措置の一環として、令和6年度の税制改正では、個人を対象に所得税・個人住民税の定額減税を実施し、企業に対しては賃金上昇額の一定割合について法人税額からの控除を認める賃上げ促進税制をさらに強化することによって、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状況をつくり、デフレマインドの払拭と好循環の実現につなげていこうとしています。戦略分野国内生産促進税制は、例えばわが国で製造している半導体の性能が中国、台湾やアメリカから大きく引き離されるなど、特定の戦略分野について積極的な長期投資を支援するため、半導体などの戦略分野に係る産業競争力基盤強化商品を指定し、これらの製造量に一定の単価を乗じた金額を法人税額から控除して、その軽減された法人税額を再投資に向けるための制度が創設されます。
イノベーションボックス税制は、企業が自ら国内で研究開発を行うことによって得た特許権やAI分野のソフトウェアに係る著作権などの無形資産について、これらの譲渡や使用許諾等から生じる所得の一定額について、所得からの控除を認め、結果として法人税率が軽減される制度が創設され、国際的にも遜色のない制度とされています。子育て支援に対する税制の骨格は、「住宅支援税制の拡充」、「生命保険料控除の拡充」、「扶養控除の見直し」、「ひとり親控除の見直し」の4点からなりますが、これらは令和7年度の税制改正大綱において本格的に検討され、実施されます。ただし、子育て特例対象個人に対する住宅ローン控除の拡充等については、急激な住宅価格の上昇等の状況を踏まえ、令和6年限りの措置として先行的に実施されます。
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