私がノンフィクションを読みだしたのは７０年代後半、ニュージャーナリズムの旗手たる沢木耕太郎らの作品に触れたのがきっかけ。なのでそれ以前、既に名を成していた草柳や梶山季之など週刊誌勃興期のルポライターや、著名なアンカーの下にデータマンとして多数のライターがつき執筆・取材を分け持つシステムには何となく古臭さを感じていた。電電公社の章では６９年の時点で既にデータ通信の将来性を扱う。各地銀間の遠隔即時処理や万博データ通信サービスのシステム開発を同社が担っていると描く。その未来についても、電話回線にコンピューターを結ぶことで、子供の夏休みの宿題も図書館へ行き大辞典を借り出す必要なく「教育用のデーターバンクにダイヤルすればちゃんと答えが届くはず」と書く見通しの早さ。
一方、現場の虫瞰図として、（未曾有の脱線多重衝突事故だった）三河島事故の際の番号案内局一課長の機転も取り上げる。彼は事故を知るや、電車衝突地点に近い病院や寺院の電話番号を一覧表に書きだし遺族や関係者の問い合わせに備えた。「果せるかな、泣き声の問いあわせが殺到したが、番号案内の交換手たちは『ご愁傷さまです』といってから適確に病院・寺院を案内した」
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