ぼくはポッキー。聴導犬(ちょうどうけん)だよ。耳が聞こえないパートナーのけいちゃん(五十嵐恵子(いがらしけいこ)さん)が、ぼくのことを絵本にしてくれた。聴導犬をたくさんの人に知ってほしいからだって。絵を描いてくれたのは、けいちゃんの友だちで手話通訳士(しゅわつうやくし)のゆきよさん(酒井幸代(さかいゆきよ)さん)。とてもかわいく描いてくれたよ。君にも読んでほしいな。
聴導犬って知ってる? 盲導犬(もうどうけん)はよく知っているよね。聴導犬は、けいちゃんみたいに耳が聞こえない人に、いろいろな音を知らせる仕事をしているんだ。目覚まし時計のアラーム、インターホン、キッチンタイマー……。音が鳴ったら聞き分けて、けいちゃんをその音が鳴ったところへ連れていくんだよ。 家の外にもいろいろな音がある。けいちゃんはぼくと出会う前、とても怖い思いをしたんだって。道を歩いていたら、後ろからきた自転車に気づかず、ぶつかりそうになった。ベルの音が聞こえなかったのに、怒られた。耳が聞こえないのは、姿を見てもわからないからなあ。 今はいっしょにいるぼくが「聴導犬仕事中」というゼッケンを付けているから、わかってくれる人もいるよ。でも、けいちゃんが食事をしようと店に入ろうとしたら、「ペット同伴(どうはん)は……」と断られた。ぼくはペットじゃないのに。盲導犬と同じ補助犬(ほじょけん)だから、電車にもいっしょに乗るし、病院にもついて行く。だって、けいちゃんにはぼくが必要だから。法律でも認められているんだよ。2009年に京都で生まれ、滋賀県の「びわこみみの里」(滋賀県守山市)で聴導犬の訓練をうけて試験に合格したんだ。けいちゃんと出会ったのは1歳のとき。それからはずっとけいちゃんといっしょ。絵本が完成したとき、けいちゃんはうれしくて枕元において寝ていたよ。ゆきよさんも「絵本をつくるのが子どものころからの夢だった」と喜んでいた。けいちゃんは「この絵本は、これまでがんばってきてくれたポッキーへの恩返しだよ」と言ってくれる。ぼくがいたおかげで、たくさんの人たちとの縁ができたんだって。ぼくもけいちゃんに「ありがとう」と伝えたいな。
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