「紅流 女講談師として生きて」神田紅さん 創作講談で女流の道開く

福岡市有数の進学校に通っていた高校時代のこと。掃除中、ゴミ箱の上に腰掛けて足をブラブラしていると、教師に見つかり、頭をコツンとたたかれた。「女の子は女の子らしゅうしましょうぜ」。「『怒るのそこ！？』と驚きました。サボったからではなく、女らしくないとの理由だったので鮮明に覚えています」

「女のくせに」「女だてらに」。女優を経て、１９７９年に講談師の二代目神田山陽に入門した後は一層、この言葉がつきまとった。師匠は何かと守ってくれたが、先輩たちは露骨な嫌がらせを繰り返し、女性が古典を継承することに強い拒否反応を示した。 それを逆手に取って芸を深め、広げたのが創作講談だった。源氏物語や泉鏡花の小説、果てはマリリン・モンロー、宇宙講談、ヒップホップ講談といった型破りな作品を次々に発表。持ち前の表現力とアイデア、華やかさで女流の地位を確立した。ただ、苦労話はそこそこ。軽快な口語体で、今だから笑える話をちりばめ、胸が熱くなる出会いや別れもつづった。「男だ、女だ、そんな時代は過ぎたのかもしれませんが、男女格差は今も社会に染みついています。この本が前に進もうとする全ての女性の励みになれば」と願う。

今も寄席に上がり、弟子を育て、日本講談協会会長の重責も担う。７２歳を迎え、「大事なのは自分流で生きていくこと。人生は出会い。多くの人に助けられ、生かされてきた分、これからも創作し、語り継ぐことで恩返しをしていきたい」と思いを新たにしている。（クラウドブックス、１７６０円）若林圭輔

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