安全保障では、米軍普天間飛行場の辺野古移転に関する迷走がある。当時の鳩山由紀夫首相は「最低でも県外」と打ち出したが、結果として代替地は見つからずに、辺野古移設に落ち着いた。あまりに不用意な首相の発言であり、同盟国の米国や関係者を混乱させただけだった。
2010年9月には、沖縄県・尖閣諸島沖の領海内に侵入してきた中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした。中国人船長は逮捕されたが、当時の菅直人首相の指示で釈放された。菅直人氏は「記憶にない」というが、当時の前原誠司外相や政府関係者は菅氏の指示があったことを認めている。東日本大震災後、震災の復興のための財政支出が決められたのはいいが、そのための復興増税が盛り込まれた。安倍氏らはこの動きを激しく批判した。東日本大震災による経済ショックは、需要ショックなので、国債発行で復興対策を賄うのが筋だが、それらは日銀が購入するので事実上財政負担がなくなる。ベン・バーナンキ元米連邦準備制度理事会(FRB)議長のいう「財政・金融同時出動」だ。こうした考え方は、従来の財政学においても「課税平準化論」として学部や大学院でも教えられていたレベルのものだ。いずれにしても、復興増税は不要だった。自然災害の後に増税が行われたのは古今東西をみても例がない。
消費増税は12年6月、民主党・自民党・公明党の「社会保障と税の一体改革」に関する3党合意によって決められた。これは民主党政権だけの問題ではなかったが、財務省に頭の上がらない野田政権での産物だといえる。世界的な潮流は税と社会保険料を一体として徴収する歳入庁がカギとなるのだが、民主党は歳入庁の設置を公約して政権交代しながら、その公約を取り下げた。政権運営に不慣れな民主党政権は、東日本大震災後に「連帯」といいながら復興増税を行い、その後に2度の消費増税を決めるという、恐ろしい「ホップ、ステップ、ジャンプ増税」を、押しつけられた。自民党もそれに乗り、増税はまんまと成功したわけだ。
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