「MCUには『アベンジャーズ』があります。でも、彼らは『ワンダヴィジョン』のような一風変わったものも作っています。そうしたことを『ゲーム・オブ・スローンズ』のドラマでもやっていけたらなって思っているんです。この世界の歴史を見せる豊かさを持たせるためにも。鉄の玉座を巡る争いを描けるのも限られています。」
ここで語られる“豊かさ”とは、どういうことなのか。マーティンが挙げた『アベンジャーズ』は各作品のヒーローが一堂に会する、いわばオールスター作品。一方、「ワンダヴィジョン」はMCU初のシットコム形式が採用され話題を呼んだフランチャイズの新機軸だった。きっとマーティンは、それがいかなるものであれ、作品一つひとつに与えられるべき個性を豊富に取り入れていきたいと願っているのだろう。 マーティンは原作者としてだけでなく、脚本家やエグゼクティブ・プロデューサーとしても映像フランチャイズに関与している。原作の深みや規模を熟知するマーティンだからこそ、ドラマ作品においてもストーリーの方向性の鍵を握ると言っても良い。マーティン自身、クリエイターとして映像フランチャイズとの関わり方を自問することもあるという。この全シナリオにおいて、一体自分は何者なんだ?って考えようとする時があります。僕はジョージ・ルーカスか? それとも(『スタートレック』生みの親の)ジーン・ロッデンベリー? いや、スタン・リー? どうやってこのIPに関わっているんだ? って。でも結局、スタン・リーではないですね
。彼には力も影響力も無かった。ストーリーを書いていたわけではないですから。彼は“このキャラクターにはこれをしちゃだめだ”とか、そういうことをは言えなかった。コミコンに参加したりカメオ出演をしたり、ただフレンドリーな友人だったんです。自分が作った世界やキャラクターに対して、メンバーから外されるのは辛いですよ。」 ここからは、作品のクリエイティブ面に対するマーティンの熱意もうかがえる。とりわけ有名な3つのフランチャイズの創始者の名前を挙げたマーティンだが、MCUを統括するケヴィン・ファイギ(マーベル・スタジオ社長)の名前に触れていないのは気になるところ。ビジネス面もカバーするプロデューサーではなく、あくまで生みの親としての関わり方を意識していることの表明なのかもしれない。
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