エスカレーターでは追い越しをせず、止まって乗って——。埼玉県議会自民党県議団が、そんな内容の条例の成立を目指している。エスカレーターでの転倒や転落事故を防ごうと、利用者に歩いたり走ったりせず、止まった状態で乗るよう努力義務を課すことが柱で、可決されれば全国初となる。自民県議団は19日にも開会を予定している2月定例会に提出する方針で、他会派にも賛同を呼びかけ、全会一致での成立を目指す。
自民県議団が提出する方針の「県エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例案」(仮称)では、エスカレーター(動く歩道を含む)の安全な利用や、管理に向けた県、利用者、事業者それぞれの責務を明記。県には安全な利用促進に向けた啓発などの施策策定や実施を促す。利用者に対しては走ったり、歩いたりせずに、止まって立った状態で乗ることを求め、事業者にも利用者への周知徹底を要請する。条例制定を検討したきっかけは、エスカレーターでの転倒や他の利用者との接触による事故が相次いでいることだ。日本エレベーター協会(東京)の調査では、エスカレーターで走ったため転倒するといった「乗り方不良」が原因の事故は、2018〜19年に805件発生。13〜14年の882件からやや減少したが、高止まりの状態が続いている。
県内に限らず全国的に、先を急ぐ人のために左右どちらかに寄り、空いた片側から追い越すという慣習もあるが、特に朝夕の通勤ラッシュ時の駅構内では、静かに乗っている他の利用者を押しのけるなどの危険な行為も横行し、トラブルも相次いでいた。 ただ、自民県議団は事業者に課す責務の範囲については慎重に検討している。鉄道会社や商業施設などは、すでに日頃から安全な運用の取り組みを進めており、どこまで管理責任を明確化するか、検討が続いている。条例案の取りまとめにあたる政務調査会の中屋敷慎一会長は「条例の一番の目的は安全。県民や事業者の協力を前提に、責務とのバランスに配慮したい」と話し、事業者の意見も聞く考えだ。
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