SPACと鳥の劇場はこれまでも、上演という形だけでなく、スタッフの研修で鳥の劇場のメンバーがお世話になるなど、関係性がずっと続いていました。ですので、規模感は違いますが、SPACには親しい感覚を感じていたんです。それで今回、私から宮城さんに「ぜひ何か一緒に作品作りをさせていただきたい」とご提案したところ、「せかい演劇祭」の1演目として上演させていただけることになりました。演目については、せっかくSPACでやらせていただくのだから世界性のある作品を……と考える中で、安部公房の作品が良いんじゃないかなと思い至って。安部公房は、かつては世界的にも高い評価を得て、よく上演されていましたが、最近はあまり上演されないなと感じていました。なので「『友達』はどうでしょう?」と宮城さんにご提案したところ、ご賛同いただきました。中島さんがおっしゃったように、俳優1人が客演する、というような関係性は何年も前から続いていたんですけれども、「次はぜひ、鳥の劇場の俳優とSPACの俳優で1本作りたい」というご提案を中島さんからいただき、それならばぜひ、「せかい演劇祭」の野外劇場で上演する演目を中島さんにお願いしたい
──「友達」では、結婚を控えたある男の部屋に、“家族”らしき一団がやって来て、男の生活と人生を乗っ取っていきます。異なる価値観を持った人たちが遭遇する、という作品のコンセプトと、2つの劇団のメンバーが一堂に会すという今回のプロジェクトには通じるものがあるのでは、と想像するのですが、稽古の様子はいかがですか?先ほど申し上げたように、SPACと鳥の劇場はこれまで交流がありましたし、私自身、例えば演劇において身体をどう考えるか、言葉をどう扱うかということに関しては宮城さん、そして鈴木忠志さんから多くのことを学んでいます。だからいわゆるプロデュース公演のように、身体のそろえ方、演劇に対する考え方を合わせるというようなところから始めないといけない、ということはまったくなく、余計なストレスやコンフリクトのようなことは全然ないです(笑)。
一方で、「友達」の面白いところは、この家族が集団でありながら1人ひとりの“我”が強いというか、個性がすごく強いところなんですよね。演劇的にはやっぱり、とある集団の中でいろいろな考え方がぶつかり合って議論になるとか、1つの言葉の定義をめぐって考え方の違いが浮き彫りになるところを表現したいし、その際に1人ひとりの個性が強いと非常に面白い。なので、俳優たち各人の個性をしっかり引き出しながら、それぞれの“違い”を際出たせていきたいなと思って、今、試行錯誤している途中です。野外空間ですが奥を闇にすることで密室性が出せると思っています。また近くに自然が息づいていて、その息吹が感じられることによって、人間がぎゅっと身を寄せ合い、お互いを温め合いながら生きている感じが表せるのではないかと思っています。もう1つには、「友達」の重要な要素って、最後に彼らが、いわば世界に向けて再スタートしていくところ、密室から出てどこかへ向かっていくところにあると思っていて。ラストまでエネルギーを積み上げつつ、家族が別の人を求めてわーっと外へ出ていき、再び世界とつながって共に呼吸し始める……そういった瞬間を描くうえで、野外
その後、こういった古くて普遍性がある題材は日本にもある気がするぞ……と考えていたところ、「ああそうだ、説経節がすごく似てるな」と気づいたんです。パンソリってそもそも5曲くらいしかないんですが、説経節も5曲ぐらいしか残っていないし、パンソリは太鼓(プク)のリズムに乗せて語られますが、説経節も三味線が取り入れられる前はササラという一種の打楽器に乗せて語られていました。そういった点で、ササラ時代の説経節とパンソリは、似ていると思うんです。また、昨年の「ふじのくに野外芸術フェスタ2023」で、僕は「天守物語」を上演したんですけれども、これが約1時間ぐらいの作品で、野外ではやっぱり短いもののほうが良いなと思って(笑)。その2つの観点から、次に駿府城公園でやる僕の芝居は、説経節を基にした短いものにしようと昨年から考えていたんですよ。それで、さてどの作品にしようか、説経節でも短いものはないか、と考えていく中で「信太妻」があるなと思いつき、そこからとんとん拍子で決まりました(笑)。ただ「信太妻」って、説経節自体のテキストが残っていないんです。おそらく文楽や歌舞伎でやられている「芦屋道満大内鑑」があんま
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