東京・銀座。道行く人が次々と足を止め、「わあ」「すごい!」と写真を撮っている。ショーウインドウの向こうには、巨大なしめ縄のようにうねる竹のオブジェ。「岡本太郎じゃないけど“なんだこれは!?”だよね。カッコいい!」なんて声も。その圧倒的な美しさから目が離せずに思わず店内へ足を踏み入れる。と、チューブ状に編まれた竹が螺旋階段の吹き抜けを、まるで生きもののように昇っている。なんだこれは!?
舞台は昨年オープンした〈グッチ並木〉。クリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレの世界観を体現する華やかな空間だ。1階と2階はショップ、3階はオーダーメイド用の完全予約制サロン〈Gucci Apartment〉。4階にはミシュラン3つ星シェフ、マッシモ・ボットゥーラとの協業によるレストラン〈グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ〉がある。 この1、2階をつなぐ螺旋階段と吹き抜けに、万人の目をくぎ付けにするアートを生み出したのが竹工芸家・四代田辺竹雲斎。大阪の堺で明治末期より襲名されてきた「田辺竹雲斎」の四代目で、その作品は〈ボストン美術館〉や〈大英博物館〉、〈ギメ美術館〉にも所蔵されている。伝統的な竹工芸の技術を用いたインスタレーションで、今、世界各国からのオファーが絶えないアーティストである。竹のインスタレーションは、竹を細く割った「竹ひご=線」の重なりでつくられる。今回の竹ひごは幅6㎜から8㎜まで3種類。「線」を均一にしないことで、手描きスケッチのような面白みや手触りを生み出した。。きっぱりとそう話す四代目と〈グッチ〉によるコラボレーションのきっかけは2021年。ブランド創設100年を迎えた〈グッチ〉は、この年が創始120年となる〈田辺竹雲斎〉とタッグを組み、京都の町家でエキシビション『グッチ...
「昨年、東京で開催された〈グッチ〉のエキシビション『グッチ ガーデン アーキタイプ』展でアレッサンドロ・ミケーレの世界観を拝見して、衝撃を受けました。ブランドの歴史を大切にしながらも、とてつもない情熱と表現力とクリエイティビティをもって新しい創造に挑んでいる。刺激されると同時に、これも“伝統と革新”だと深く共感し、その共通哲学を表現できたらと思ったのです」「螺旋階段の2階部分は二方の壁が鏡貼り。天へ昇る造形が鏡の中にも現れることで、世界が別の次元へも広がっていくイメージをつくれる気がしたんです。時代、国、人種、性別……いろんな違いを超えて“伝統と革新”が広がっていく。そんな想いを込めました」確かに!...