FRB議長、利下げ意欲強調 「物価停滞に強い懸念」
【パリ=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は16日の講演で「物価停滞が長引く懸念を強めている」と述べ、30~31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げに踏み切る考えを改めて示唆した。ただ、米景気の先行きは「底堅い成長が続くというのが基本的な見方だ」とも指摘し、大幅な政策金利の引き下げや継続的な利下げは慎重に判断する姿勢もみせた。
パウエル議長は17~18日にフランスで開く主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に合わせ、16日にパリを訪問して講演した。パウエル氏は早期の利下げを繰り返し示唆してきたが、同日の講演でも「貿易情勢と世界景気を巡る不確実性が増している」と主張。米景気の減速を避けるため、予防的に金融緩和に転じる方針を示した。
米経済は「企業投資が減速して、製造分野が弱含んでいる」と指摘し、FOMC参加者の多くが「物価上昇率が目標の2%を下回ったまま停滞が長引くとの懸念を強めている」と明らかにした。FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は上昇率が7カ月連続で2%を下回っており、これを利下げ検討の根拠と明示した発言だ。
先物市場は既に100%の確率で30~31日の会合での利下げを織り込んでおり、焦点は政策金利の引き下げ幅と先行きの利下げ回数に移っている。パウエル議長は16日の講演で「米経済は底堅さを保ち、物価上昇率も2%近辺に戻っていくというのが基本的な予測だ」と述べ、景気後退時のような政策金利の大幅な引き下げには慎重な姿勢をのぞかせた。
先物市場は、月末の会合で0.25%の利下げに踏み切ると7割強がみており、3割弱は0.5%と大幅な利下げを見込んでいる。6月の会合で先行して利下げを提案したセントルイス連銀のブラード総裁は「利下げ幅は0.25%で十分」との考えを示しており、7月末の会合でも同案が軸になりそうだ。
金融市場はFRBが年内に3回の利下げに踏み切るとの見方に傾いている。パウエル議長は米景気の力強さを強調し、利下げ局面が長期的に続くとの見方をけん制。一方で「貿易摩擦に加え、米連邦政府の債務上限問題や英国の欧州連合(EU)離脱も未解決のままだ」とも述べ、先行きの利下げシナリオは政治リスク次第で柔軟に検討する考えを示した。
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