未完の大器がいよいよ目覚めるか-。5月にリアルジャパンからDDTに移籍した「大鵬3世」納谷幸男(24)が、15日の大田区大会で因縁の鈴木秀樹(39=フリー)とシングルで対戦する。3月に鈴木とタッグ戦で対戦し、惨敗。厳しい言葉を浴びせられたのが移籍の1つのきっかけとなった。環境が一変した納谷に、現在の生活や鈴木戦への思いを聞いた。【取材・構成=高場泉穂】

2メートルを超える長身でポーズを決める納谷幸男(撮影・中島郁夫)
2メートルを超える長身でポーズを決める納谷幸男(撮影・中島郁夫)

「ほとんど休みがないです」と話す納谷はうれしそうに見えた。練習、移動、試合の繰り返し。そんなプロレスラーとして当たり前の日々が今は何よりの喜びだ。リアルジャパン在籍時は格闘技の練習が基本。リングでの練習はほとんどなかったという。試合も他団体への参戦を含め年間10戦程度。身長2メートル超の恵まれた体を持つ「大鵬3世」として注目を浴びる分、実力とのギャップに悩まされてきた。「お客さんの反応を見てもそうだし、自分でも分かっていた。ずっとこのままじゃいけないと思っていました」。この5月、覚悟を決め、DDTに電撃移籍した。

17年12月、雷神矢口(左)にハイキックを放つ納谷幸男
17年12月、雷神矢口(左)にハイキックを放つ納谷幸男
19年3月、2人に対し技を仕掛ける納谷幸男(中央)
19年3月、2人に対し技を仕掛ける納谷幸男(中央)

今はほぼ毎日、御茶ノ水の道場で練習生や先輩と汗を流し、加えて、週3、4度のペースでグラップリング世界王者タカ・クノウの指導のもと、ウエートトレーニングに励む。「ずっとリングで練習したいと1年前ぐらいから考えていて、今はそれができている。楽しいです」。渇きを癒やすように、プロレスにどっぷり漬かる日々を過ごす。

15日に控える大田区体育館でのビッグマッチでは、因縁の鈴木と初シングルマッチを行う。鈴木とは3月に対戦し、手も足も出ずに完敗。「心技体すべてがなっていない。ゼロからやり直せ」と厳しい言葉を浴びせられた。「あの時はなんもできなかった。終わったあと、自分で『これはだめだな』と思いました」。ぐうの音も出ない試合内容と言葉が、移籍のきっかけの1つにもなった。

大鵬の書が記されたTシャツを披露する納谷幸男(撮影・中島郁夫)
大鵬の書が記されたTシャツを披露する納谷幸男(撮影・中島郁夫)

やることは決めている。「前回あれだけボコボコにやられて、絶対勝てます、いい試合をしますとは言えないです。前回は気持ちの部分で負けていた。本当は足にしがみつくぐらい必死にやるべきだった。それもできなかったのが悔しい。全てにおいて鈴木選手とは大きな差がある。なにか1つでも、気持ちの部分だけでも、食らいついていこうと思います」。プロレスラーとして生きていく。その覚悟を鈴木にぶつける。