コラム:期待高まる上海の「科創板」、大規模改革の前触れか
Christopher Beddor
[香港 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 上海証券取引所のハイテク企業向け市場「科創板」は複数の企業が新規株式公開(IPO)に近づいているが、気乗り薄の投資家は成功の兆しが増えるのを見極めようとするだろう。ただ、これまでの動きから科創板創設構想で中国の主要取引所の自由化が進むと読み取れ、投資家はまもなくこうした手掛かりを手に入れることになるだろう。科創板という実験的な取り組みは、より大きな動きの始まりなのかもしれない。
科創板は100社以上が上場を求めて列をなしており、ロイターによると先月時点の調達計画は総額160億ドルとなった。初めて公開価格を発表したのはディスプレー検査装置を製造する蘇州華興源創科技で、上場第1陣企業の取引が22日から始まる予定。
科創板の新たな上場制度は多くの期待を集めている。科創板の上場は登録制で、規制当局による承認が必要な上海や深センの証取とは大きく異なる。またIPO価格をPER(株価収益率)の23倍以下に抑えるという価格制限が適用されず、赤字企業や多議決権種類株を持つ企業の上場を受け入れる。1日当たりの値幅制限も広げられる。
ただ、懐疑的な見方が出るのは無理もないことだ。中国はこれまでに立ち上げた代替的な市場がいずれも失望を招く結果となり、非公開企業向けの店頭市場「新三板」は閑古帳が鳴く。中国のスマートフォンメーカー、小米科技(シャオミ)<1810.HK>が国内で預託証券を発行する計画も頓挫した。科創板にも、公開された株式の2─5%の保有を引受業者に義務付けるなど、いくつか厳しい規制が設けられている。
しかし悲観論者はもっと大きなポイントを見逃している。4年近く動きのなかった中国政府は、株式市場の大幅な改革を進めようとしているようだ。中国証券監督管理委員会の易会満主席は今年2月の就任後初の記者会見で、科創板構想を最優先課題に挙げた。習近平国家主席が科創板を支持したことも、承認ペースが速まるのに役立っている。
中国では、証券監督当局の厳しい対応で発行体が海外に逃げ出していた。リフィニティブのデータによると、海外でIPOにより資金を調達した中国企業は年初来で少なくとも58社、調達額は110億ドル近い。それだからこそ、科創板には「買い推奨」がたやすくなるのだ。
●背景となるニュース
*6月25日の情報開示によると、ディスプレー検査装置を製造する蘇州華興源創科技が科創板での上場に向けて初めてIPOの公開価格を発表した。1株当たり24.26元(3.53ドル)で4010万株を公開し、9億7300万元を調達する構え。同社の時価総額は97億ドル程度となる。
*科創板は6月13日に行われた開設式に中国証券監督管理委の主席や劉鶴副首相が出席し、政治的な重要性が浮き彫りになった。
*上海証取は7月5日、科創板が22日から上場第1陣企業の取引を開始すると発表した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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