文科省は、明白な法令違反などが確認できれば解散命令の請求を検討する構えだ。霊感商法や高額寄付などの被害の訴えが相次ぐ中、教団の組織的な関与や資金の流れなどどこまで実態の解明につながるかが焦点だ。
宗教法人法は、法令に違反して著しく公共の福祉を害する行為などがあった場合に、裁判所が解散を命令できると定めている。文科省は組織運営や財産・収支に関して報告を求める文書を22日に教団側に送付したのをはじめ、解散命令に該当する違法行為の「組織性、悪質性、継続性」を裏付けるのに必要な証拠収集を進めていく。信教の自由と政教分離の原則を重んじる宗教法人法に質問権が盛り込まれたのは、オウム真理教の一連の事件がきっかけだ。国は宗教団体に対し調査権限を有するが、質問に当たっては「信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない」と条文に明記されている。 当初は解散請求に消極的だった岸田文雄首相が、旧統一教会に対する厳しい世論を意識し、支持率回復のため調査権限の行使に方針転換したという見方もある。宗教の名を借りた反社会的な不法行為に厳しく臨むのは当然のことながら、調査権限や解散命令請求の行使に当たって、政治的な意図が入り込む余地があってはならない。だが、政府の概要には野党や被害者救済に取り組む弁護士らから、救済や規制の範囲が限定的だとして実効性に疑問が呈されている。教団の信者を親に持つ「宗教2世」らも、「被害者の声を聞いた上で再検討を求める」と訴えている。被害の実態に合った新法の制定へ、与野党で早期に道筋をつけてもらいたい。
岸田首相が真剣に救済を考えるのであれば、自民党の政治家と教団の関係についても膿(うみ)を出し切ることだ。政治家が広告塔の役割を担い、被害の拡大につながったことに正面から向き合うべきだ。教団の名称変更の経緯や安倍晋三元首相と教団の関係など、解明しなければならないことがまだ残されている。
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