現在の小売企業で、北海道内の売上高が最も多いのはイオン北海道です(3216億400万円=2022年2月期)。総合スーパーと専門店街を1カ所に集めた大型ショッピングモール『イオンモール』から、中心市街地のミニスーパー『まいばすけっと』まで多様な店を展開。北海道にもイオンファンの消費者は大変多い。しかし、ほんの20年ほど前まで、イオンは道内においては“無名企業”であり“嫌われ者”でもありました。イオンはどのようにして北海道の消費者に受け入れられていったのかを振り返るとともに、北海道の小売市場に及ぼした影響を考察します。(経済部デジタル委員 浜中淳)■「残された時間は5年」―札幌で「外資の脅威」語った岡田卓也氏
拓銀破綻後の不況下で、ラルズ(現アークス)、マイカル北海道(現イオン北海道)、ホーマック(現DCMホールディングス)、ニトリ(現ニトリホールディングス)、ツルハ(現ツルハホールディングス)の上場小売り5社が急成長した<北海道現象>が全国的な注目を集めていた1999年8月4日、北海道新聞社は道新フォーラム『流通改革と北海道経済』を札幌市内のホテルで開催した。その基調講演の講師を務めたのが当時のジャスコ会長、現イオン名誉会長相談役の岡田卓也氏(97)であった。『生活者主権の時代の流通改革』と題した講演で岡田氏は、アマゾン・ドット・コムが、かつて全米最大の小売業者だったシアーズ・ローバックの時価総額を追い抜いたことを取り上げ、今日のインターネット通販の隆盛を予言。小売業が21世紀を生き抜くためには、既成概念の打破が何よりも必要であると強調した。
とりわけ力を入れて語っていたのが、欧米と日本の小売業者の間の経営格差だった。「欧米の強大な流通業と勝負するために残された期間はあと5年だと断言できる。その間に力を付けなければ、またたく間に日本の市場は席巻されてしまうだろう」岡田氏は講演後、ニトリ社長の似鳥昭雄氏、メリルリンチ証券シニアアナリストの鈴木孝之氏、北海道大学経済学部教授の井上久志氏(肩書はいずれ当時)とともにパネル討論に参加。そこでも印象深い発言を残している。「<北海道現象>の本質は業態の改革だ。ツルハは『薬屋』ではないし、ニトリも『家具屋』の呼び方ではくくれない。そもそも『何々屋』と呼ばれるような店は、売り手の都合でできた業態だ。北海道で成長している店は生活者の発想でできた新しい業態と言えるだろう」。岡田氏はそのように北海道の成長企業を高く評価する一方で、こう付け加えることを忘れなかった。「そうは言っても、国際的に見れば全部零細企業ですが」―。
当時、日本の小売業界では“外資脅威論”が盛んに語られていた。この道新フォーラムのあった99年には米国のコストコ・ホールセールが日本1号店を出店、翌年にはフランスのカルフールの進出も控えていた。そう遠くない将来、世界最大の小売業者、米国のウォルマートも日本に乗り込んできて、力のない国内企業は淘汰(とうた)されてしまうのではないか…。国内の小売業界の関係者だけでなく、私たちメディアの人間もそう考えていた。国内企業の中で、とりわけ危機感を強めていたのがイオンだった。札幌での岡田氏の講演から2年後の2001年、外資との本格競争を視野に、世界の小売業売上高ランキング10位内を目指す<グローバル10>構想を掲げ、規模拡大にまい進していくことになるのだ。いまとなっては意外だが、岡田氏が札幌で「外資の脅威」を語っていた1999年当時、『イオン』『ジャスコ』の名前を知っている北海道の消費者は非常に少なかった。...
大事な大事なスポンサー様イオン様に媚び諂って立憲様にも土下座かな?