谷川翔(20=順大)が昨年の悪夢を払拭(ふっしょく)した。持ち点との合計合計254・363で初優勝を果たした。2位が兄の谷川航で兄弟ワンツーフィニッシュとなった。

試合後のインタビューでは「本当に今日1日が怖くて、本当に怖くて…。」と言葉を詰まらす。「いけるかなと。でもみんなが応援してくれているし、今までやってきたことを自信をもってやろうと」。我慢していたものがあふれだした。あん馬で失敗はあったが「やりきることに集中した」という。

今年と同じく全日本選手権を制し、リードを保って迎えた昨年大会。内村航平、白井健三と同組で競り合い、5種目を終わって首位で迎えた最終鉄棒の演技で落下した。一気に4位まで順位を落として、面前にあった世界選手権代表の座まで逃した。補欠として帯同したドーハで、日本代表が団体総合で3位に甘んじる姿を焼き付けた。

「NHK杯というのはいまでも怖い、そういうのはあるんですけど、ここまで来たらやるしかない。去年の悔しさは忘れなくて良いが、嫌なイメージは全部忘れて伸び伸びやるしかない」。17日の開幕前日会見ではそう誓った。最大の脅威となる内村航平も予選落ちしており不在。「その点では怖いというのはないが、一緒に戦って勝ちたかったというのはあります」と気概は見せたが、新時代の旗手としても勝ちたかった。

根っからの明るい性格。この日の選手入場でも投げキッスのパフォーマンスで笑顔を見せた。試合直前練習を終えて仲間から緊張してるのではと突っ込まれると、右手と右足、左手と左足を交互に一緒に出して歩く“緊張してますパフォーマンス”を披露し、周囲を和ませた。

昨年まで内村が10連覇した大会を制し、20歳で得た悲願の世界選手権代表切符。「まだまだ足りないところはいっぱいある。世界選手権は今の演技では戦えない。安定感を増してスコアをあげていきたい」。リオデジャネイロオリンピック(五輪)の団体総合金メダルメンバーが沈んだ今年の代表争いを首位で駆け抜けた若いエースが、世界の舞台へ飛び出す。