熱パの上位争いがますます過熱してきた。4回2死二、三塁。楽天辛島航投手(29)の初球が、ロッテのレオネス・マーティン外野手(32)の頭部近くに直撃した。怒るマーティンに、楽天野村克則1軍作戦コーチ(47)がベンチから飛び出した。一触即発ムードから逆転大勝の3位楽天と、完敗の2位ロッテ。4・5ゲーム差に縮まった両軍ベンチの機微を見つめた。マーティンが、静かに歩き出した。女優似と話題の笑顔はあるはずもなく、正対するマウンドを冷たくにらむ。一塁側ベンチから一目散で制止に向かった井上にも、背を向ける。「当てられ続けたらいつかいきますよ」。冗談交じりに話していた陽気な助っ人も、我慢が限界を超えた。
伏線は明白だ。8月に10本塁打し、内角攻めが増えた。7月まで4死球。8月は7死球。楽天戦でも2打席連続死球があった。「故意じゃないのは分かるので」と話しながらも「故意と感じたら、どうなりますかね」と笑いながら添えたのが8月末のこと。個人の13死球も、チームの44死球も、12球団最多だ。 悔しさもある。2点リードを4点、5点リードに変えられる打席だった。マーティンの打点が勝敗に直結するケースが多い。派手な野球ではない。12球団1位の357四球を生かし、しぶとく1点1点を重ねる。この日も4回、ベンチは9番柿沼にためらいなくスクイズを指示した。先発石川が7回に奪われた3点が痛い。井口監督も「調子が良くなく、逆球も多く、難しいのはありました」としながら終盤も託した。劣勢時の救援陣の防御率が振るわず、現に石川降板後も失点は増えた。
マーティンが鬼になっても、後続で追加点はなし。井口監督も「あそこで引き離すくらいの流れがほしかった」と悔やむ。試合運びもベンチワークも、より緊迫する秋。「1年やってきたことをそのままやるだけです」と指揮官。四球も安打、と割り切って得点し、投手陣が守る。綿密な分析に基づく、試合ごとの最適な布陣で挑む。マリーンズらしさを、より徹底する。【金子真仁】
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