調査に使われたスタークラフト2は、ターン制をとらずにリアルタイムで進行する世界で軍隊を構成し、対戦相手と戦争を繰り広げて勝敗を決めるPCゲームで、多くの賞金大会やプロリーグの試合が実施される人気タイトル。実験を率いたジョン・トンプソン氏によると、スタークラフトは超高速で行われるチェスのようなゲームで、素早い判断と操作が求められ、その能力にたけているほどプレイヤーは有利にゲームを進められるとのこと。トンプソン氏は「過去に行なわれてきた脳と老化に関する実験や研究は、被験者にシンプルなタスクを課すもので、実験内容を現実での人間の行動や判断に照らし合わせることは不可能です。しかしながら、スタークラフトで求められる素早い判断や、その判断に基づく操作は現実での人間の行動や判断に非常に似通ったところがあります。例えば、周囲に注意を払いながら素早く正確な操作が求められる自動車の運転がそうですね」と、スタークラフトを使って脳と老化の関係を調査した理由を説明。
スタークラフト2はプレイヤーのレベルに応じて分けられた7つのリーグがあり、調査はその中からブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナ・ダイアモンド・マスターに属する16歳から44歳までのプレイヤー3305人を対象に、「年齢」と「ゲーム内で状況を認識してから操作を行なうまでの反応時間」の関係を調べたもの。こちらは調査結果をグラフに表したものです。グラフは縦軸がゲーム内での状況を認識してからの反応速度を示す値、横軸がプレイヤーの年齢を表しており、折れ線は上から順番にブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナ・ダイアモンド・マスターのリーグを示しています。グラフを見ると明らかなのが、24歳以上のプレイヤーの反応速度を示す値が、年齢が高くなるにつれて上昇しているということ。つまり、年齢の高いプレイヤーほど反応速度が遅くなっていることが判明しました。
24歳と39歳のプレイヤーでは、ゲーム内での状況を判断してから行動に移すまでに約30秒の差があるそうです。ただし、年齢の高いプレイヤーは反応速度が遅いにも関わらず上位リーグに存在し、そういったプレイヤーはショートカットやシンプルな戦略を使うことで、若年層のプレイヤーと対等に戦っているとのこと。 トンプソン氏は調査から興味深い結果を得られたことに満足しつつも、「被験者をスタークラフトのコミュニティサイトから募集したため、女性プレイヤーや極端にレベルの低いプレイヤーからはほとんどデータを取ることができなかった」としており、今後は性別やレベルを問わずに、幅広い層のプレイヤーからデータを収集していくと述べました。
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