米政府機関が培養肉の安全性に「異議なし」--量産化に向けた課題や日本が生かせる強みは?

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世界最大の潜在培養肉市場とみられる米国で、11月に初めて培養肉の食としての安全性に対する認可をFDA(Food and Drug Administration)が下した。米国シリコンバレーに在住するアドライトの熊谷伸栄氏が、代替タンパク食品や培養肉に関する動向や今後の注目点などについて解説する。

培養肉が新たなフェーズへ--米FDAが安全性認可

シンガポールは世界で初めて培養肉の認可を出しているものの、市場規模でみれば、やはり米国と欧州と比べると実に小さい。また、EUは潜在市場規模では一番大きい一方で、許認可が下りるまでの道のりが一番長いこともわかる。培養肉の制度的枠組みが今回の米FDAの動きを受けて、2023年にはEUや世界各国でどのように形成されていくのかが注目される。 脂質は「人間の第6の味覚」とも最近では解釈されているが、われわれが日頃食べ親しんできた動物性のお肉が「美味しい」とわれわれが味覚で感じる重要な要因として、「脂分」だと言われる。国内外の研究グループにおいても、「甘味、塩味、酸味、苦味、うま味」に続く第6の味覚として、「脂味」が存在することが確認されている。プラントベースや培養肉において脂肪成分に特に求められるのは、従来の油脂と同様の特性(成分、融点、栄養価、風味、品質、など)を満たすだけにとどまらず、既存の油脂生産の抱える問題(例:畜産から発生するCO2排出、森林破壊、動物福祉的な問題、コレステロールや飽和脂肪酸といった体に良くないと言われる成分、等)を解決するような代替素材を創り出すことにある。特に牛脂や豚脂といった動物性油脂やパーム油、ココナッツ油といった森林由来の油脂と比べて、植物由来の油脂は融点が低いとされており、加熱調理をするまで固形状態を保つ脂分が求められる代替肉の油脂としての課題がある。

一つ事例をあげると、Yali Bioはサンフランシスコで創業した2021年に設立されたばかりの代替油脂開発のスタートアップだが、早くも2022年2月に300万9000米ドルのシードファイナンスを集めている(累計調達総額:500万米ドル:約6.8億円)。 彼らは、精密発酵や合成生物学の知恵に基づき、従来の動物性脂肪に代わる、「地球にも動物にも優しい新たな油脂成分をデザインする」“Designer Fats”を創り上げることを標ぼうする、面白いスタートアップだ。

 

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