２歳だった伸子さんに当時の記憶はほとんどない。それでも亡き母に聞いた避難の記憶が今、リアリティーを持ち、迫る。戦後７７年の「慰霊の日」。いま多くの県民が同じように記憶を呼び起こされている。
玉城デニー知事は追悼式の平和宣言でロシアによるウクライナ侵攻に触れ「平穏な日常が奪われ、恐怖と隣り合わせで生きることを余儀なくされている状況は、７７年前の沖縄における住民を巻き込んだ地上戦の記憶を呼び起こす」と述べた。大きく揺らぐ国際情勢の中で語られることが増えた「台湾有事」。自衛隊の南西諸島配備と、広大な米軍基地の存在。東アジアで有事が起きれば沖縄が真っ先に攻撃対象にされる。追悼式で繰り返された訴えは、県民の危機感そのものである。「ウクライナでの戦闘の様子が毎日報道されています。この状況に乗じて、日本も軍備を増強するべきだ、核をアメリカと共有するべきだという声が上がっております。しかし私たちは、軍備の増強は平和をもたらさないと考えております」
沖縄戦では日本軍が、住民１０万人近くがすでに避難していた本島南部への撤退を決行したことで、より住民被害が増大した。熾（し）烈（れつ）な地上戦に見舞われた沖縄戦が示すのは、軍民混在の結果、住民の犠牲は増えたという事実である。
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