放置トラックの中で約50人死亡、移民か 米テキサス州

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画像説明, 線路沿いに放置された大型トラックの車内で少なくとも46人が死亡しているのが見つかった(27日、テキサス州サンアントニオ)

米テキサス州サンアントニオの郊外で27日、放置されていた大型トラックの中で少なくとも46人が死亡しているのが見つかった。移民だとみられている。消防当局によると、子供4人を含む16人が病院に搬送された。

サンアントニオ消防本部は、生存者は熱中症や熱疲労の症状を示し、「触ると熱い」状態だったと話している。

チャールズ・フッド消防長は、遺体発見の通報を受けて現地時間午後6時(日本時間28日午前8時)ごろ、救急隊が現場に到着したと、報道陣に説明した。

「トラックを開いたらそこに遺体が積まれているなど、そんなことあってはならない。そんな状態を想像して出勤する者などいない」と、フッド氏は述べた。

消防長によると、運転手は見当たらず、冷房はついていなかったという。車内に飲料水もなかったという。

記者会見に同席したサンアントニオ警察のウィリアム・マクマイナス本部長は、27日夜の時点で捜査の管轄は連邦政府の国土安全保障省に移ったと話した。これまでに3人を拘束したという。

サンアントニオのロン・ナイレンバーグ市長は、被害者について「この人たちには家族がいた(中略)おそらく、これまでより良い生活を探していたんだろう」として、「恐ろしい悲劇だ」と述べた。

メキシコのマルセロ・エブラルド外相は、病院に運ばれたうち2人はグアテマラ国籍だと明らかにした。他の被害者の出身国は明らかになっていない。

地元テレビ局KSATによると、トラックはサンアントニオ南西部の線路沿いで発見された。

サンアントニオはメキシコとの国境から約250キロの位置にある。現地の27日の最高気温は39.4度だった。

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画像説明, 放置トラックを取り囲む救急隊

テキサス州のグレッグ・アボット州知事(共和党)は、ジョー・バイデン米大統領(民主党)の「恐ろしい国境開放政策のせいだ」と非難した。

これに対して、今年11月の知事選にアボット知事の対立候補として出馬する民主党のベト・オローク元下院議員は、ひどいニュースだとして、「密入国手配業者を解体させ、代わりに合法的な移民手段拡大」のため緊急に対策をとるべきだと述べた。

移民受け入れはアメリカで意見の大きく分かれる政治の争点となっている。昨年は、正式な手続きを経ずにメキシコから入国しようとして拘束される人数が過去最多になった。その多くはきわめて危険な方法とルートでアメリカを目指す。

2021年にアメリカ国境を違法に越えようとした人の逮捕は173万件と過去最多だった。今年はこの数を超える勢いで、その多くが、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルなどから来る人だという。

中米地域の貧困や暴力を逃れようとする移民の多くが、密入国業者に大金を払って越境を目指す。近年では、その途中で命を落とす人が増えているものの、今回ほどの人数が一度に死亡するのは初めて。

地元テレビ局KENS5のマット・ヒューストン記者はBBCに対して、「もしこれが、見た目の通りの密入国あっせん事件なら、類似事件の中ではアメリカ史上最悪のものだ」と話した。

サンアントニオでは2017年にも同様の事件があり、大手スーパーの外に放置された大型トレーラーの中で移民10人が死亡しているのが見つかっている。

今回の事件についてキリスト教カトリック教会サンアントニオ教区のグスタヴォ・ガルシア=シラー枢機卿はツイッターで、「主よ、彼らを憐れみたまえ。今までより良い暮らしを望んでいたのです」と書いた。枢機卿はさらに、「またしても、移民制度改革に取り組む勇気に欠けているせいで、人が命を落とし、人生を破壊されている」ともツイートした