ウクライナ、領土割譲を含む停戦には「合意しない」 キーウではポーランド大統領が演説

Destroyed Russian infantry vehicle on display in Kyiv

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画像説明, ウクライナ・キーウのミハイリフスカ広場では、破壊されたロシア軍の歩兵戦闘車が展示されている。

ウクライナ政府は22日、領土を譲り渡すことを条件とするロシアとの停戦には合意しない姿勢を示した。一方、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は同日、外国首脳として初めてウクライナ議会で対面での演説を行い、ウクライナ人だけが自分たちの未来を決めることができると語った。

ウクライナ政府の和平交渉団を率いるミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、同国が譲歩すれば、より大規模で血なまぐさいロシアの攻撃につながるだろうと述べた。

前日にはウォロディミル・ゼレンスキー大統領が終戦は外交を通じてしか実現できないと述べており、ウクライナ側は態度を硬化させたとみられる。

ウクライナ東部の制圧を目指すロシア軍は、セヴェロドネツクで防衛を続けるウクライナ軍を包囲しようとしている。

停戦をめぐっては、イタリアのマリオ・ドラギ首相が19日、「できるだけ早く達成されなければならない」と同国の議会で述べるなど、即時停戦を呼びかける声が上がっている。

しかし、ポドリャク氏はこうした動きは逆効果になるとした。

「戦争は止まらない。しばらくの間、一時的に止まるだけだ」、「彼ら(ロシア)はより血なまぐさい、新たな大規模攻撃を始めるだろう」とポドリャク氏は述べた。

キーウで取材するBBCのジョー・インウッド記者は、ロシアが望むものと、ウクライナ側が受け入れられるものの間に、現時点では妥協点はないとしている。努力次第では望みがあると双方は感じているものの、交渉が実現する可能性は低いという。

「ウクライナの未来を決めるのはウクライナ人だけ」

Andrzej Duda and Volodymyr Zelensky

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画像説明, ウクライナの首都キーウを訪れたポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領(左)と握手を交わすウォロディミル・ゼレンスキー大統領(右)

ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は22日、ウクライナの首都キーウを訪問。外国首脳として初めて、ウクライナ議会で対面での演説を行った。

ドゥダ大統領は、ウクライナ人だけが自分たちの未来を決めることができると語り、スタンディングオベーションを受けた。

また、ポーランドはウクライナの欧州連合(EU)加盟にあらゆる手を尽くすつもりだと付け加えた。

しかし、フランスのクレマン・ボーヌ欧州問題担当相は22日のラジオインタビューで、ウクライナがEUに加盟するにはおそらく「15年か20年」はかかるだろうと述べた。

The Polish leader was given a standing ovation for his address in Ukraine's parliament

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画像説明, ウクライナ議会でスタンディングオベーションを受けるポーランドのドゥダ大統領
The leaders of Poland and Ukraine embraced in the chamber earlier today

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画像説明, 議会内で抱き合うポーランドのドゥダ大統領(左)とウクライナのゼレンスキー大統領

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東部の状況

ウクライナ軍参謀本部は、ロシア軍がウクライナの防衛線を突破し、東端ルハンスク州の行政上の境界地点に到達しようとしていると発表した。

ルハンスク州のセルヒィ・ハイダイ知事は、ロシア軍が4方向からセヴェロドネツクへの侵入を試みたが失敗に終わったと述べた。ただ、住宅地への砲撃は続いていると、メッセージアプリ「テレグラム」に書いた。

さらに、セヴェロドネツクとリシチャンスクを結ぶ橋が破壊されたとした。

BBCはこうした主張を独自に検証できていない。

The Luhansk regional governor blamed Russian 'orcs' for destroying a bridge between Severodonetsk and Lysychansk

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画像説明, ルハンスク州のハイダイ知事はセヴェロドネツクとリシチャンスクを結ぶ橋がロシアに破壊されたとしている

南東部で民間人が負傷

南東部ザポリッジャの当局は、ロシア軍によるミサイル攻撃で複数の民間人が負傷したと発表した。

夜中に複数の爆発があったという。

当局は、救急隊が現場に駆け付けたとテレグラムに投稿した。

マリウポリ市民の強制移送が加速

南東部の港湾都市マリウポリの市長補佐官、ペトロ・アンドリュシチェンコ氏によると、同市からロシアの支配地域へ市民を強制移送する動きが加速している。

アンドリュシチェンコ氏は、住民313人が21日にロシア占領下のベジメンヌにある、いわゆる「選別キャンプ」に連行されたとテレグラムに書いた。そのうち55人は子供だという。

同氏は、キャンプに連行された人の多くは後にロシアへ移送されるとしている。

BBCはこの主張を検証できていない。ロシアはかねてから強制移送はしていないとしている。

マリウポリでは20日、アゾフスタリ製鉄所に最後まで残っていたウクライナ兵が投降。同市は現在、ロシアの完全な支配下にある。

ロシアが任命した「市長」が負傷か

ロシア支配下のウクライナ南東部エネルホダルで爆発があり、ロシアが「市長」に任命したアンドリー・シェフチク氏が負傷したと、ロシア国営国営RIAノーヴォスチ通信が報じた。シェフチク氏は現在、集中治療室に入っているという。

ロシア軍に追放され、現在はザポリッジャ近郊にとどまっている、エネルホダルのドミトロ・オルロフ市長は先に、シェフチク氏とその護衛が負傷して病院に搬送されたとテレグラムに書いた。

オルロフ市長は、ほかには負傷者はいなかったとし、「正確で、標的を定めた攻撃」であったことを示唆した。

エネルホダルは欧州最大の原子力発電所がある、人口約5万人の都市。3月からロシア軍に占領されている。

ウクライナ、戒厳令を8月まで延長

ゼレンスキー大統領はロシアが侵攻を開始した2月24日に戒厳令を発令。当初は30日間としていたが、これまでに2度延長してきた。

ウクライナ議会では22日、戒厳令の3回目の延長が絶対多数により承認された。

これにより、戒厳令は8月23日までの90日間延長されることとなる。