ウクライナ兵の一部、マリウポリ製鉄所から退避 ハルキウではロシア軍を「国境まで押し戻す」
ロシア軍が包囲したウクライナ南東部マリウポリで16日、人道回廊が設置され、アゾフスタリ製鉄所に取り残されていたウクライナ兵の一部が退避した。一方、米国防総省高官は、ウクライナ軍がロシア軍をロシア国境から3~4キロの地点まで押し戻したとの見方を示した。東部ルハンスク州の知事は、ロシア軍の砲撃で市民10人が死亡したと発表した。
ウクライナ国防省によると、マリウポリのアゾフスタリ製鉄所から兵士264人が救出され、ロシアの支配下にある2つの地域に移されたという。
同省のハンナ・マリャル次官はビデオ声明で、「5月16日、医療支援を受けるため、アゾフスタリ製鉄所から重傷者53人がノヴォアゾフスクの医療施設に退避した」と述べた。
「さらに211人が人道回廊を通じてオレニウカへ移された」
「彼らの将来的な帰還に向け、(捕虜)交換手続きが取られることとなる」
マリャル次官は、今回救出されたウクライナの負傷兵264人と、ロシア兵捕虜を交換することになるだろうと述べた。
兵士が運ばれた両都市は、ウクライナ東部ドンバスに位置する。この地域は2014年、ロシアの支援を受ける分離主義者に支配された。
ウクライナ部隊は製鉄所内に残る兵士を救出するため活動を続けていると、マリャル次官は付け加えた。
ロイター通信は、製鉄所から退避したウクライナ兵を乗せたバスだとする写真を複数配信した。
複数のバスが製鉄所を出発し、親ロシア派の支配下にあるノヴォアゾフスクに到着したという。
写真では、ストレッチャーで運ばれる男性の姿が確認できる。
<関連記事>
救出作戦には「慎重さと時間」が必要
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「マリウポリの防衛隊を救う」作戦が開始されたが、その作業には「慎重さと時間」が求められると述べた。
ゼレンスキー氏は毎晩定例の動画演説で、「ウクライナ軍、情報機関、交渉チーム、赤十字国際委員会、国連の活動に感謝する。我々の仲間の命を救うことができると期待している」と述べた。
「その中には重傷者もいる。彼らは医療支援を受けている」
そして、「ウクライナにとって、ウクライナの英雄たちが生きている必要がある。そのことを強調しておきたい」と続けた。
「これが我々の原則だ。相応の人物なら誰もがこの言葉を理解できると思う」
ゼレンスキー氏は、マリウポリで救出作戦が続く一方で、東部では別の戦闘が激化しているとも付け加えた。
そして、ウクライナ部隊は「ロシア軍が依然として前進を試みる地域で、絶え間ない攻撃を退けている」とした。同氏は、ロシアの主要目標になっている1つとして、東部ルハンスク州セヴェロドネツク市を挙げた。
ルハンスク州知事、市民10人死亡と
東部ルハンスク州のセルヒイ・ハイダイ知事は16日、セヴェロドネツクでロシア軍の砲撃があり、少なくとも10人の市民が死亡したと発表した。
この激しい砲撃で住宅地で火災が発生し、住宅や病院、科学製品製造工場が被害を受けたという。
BBCはこの主張を独自に検証できていない。
ウクライナ軍、ハルキウでロシア軍を押し戻す
ウクライナ当局は、東部ハルキウ州の北部を防衛する部隊がロシア軍を押し戻し、ロシア国境まで到達したとしている。
米国防総省高官も、ウクライナ軍がロシア軍をロシア国境から3~4キロの地点まで押し戻したとみていると、ロイター通信は伝えた。
これに先立ち、ウクライナ部隊がウクライナ国旗と同じ黄色と青色の国境標識のそばに集まった場面とされる写真が出回った。
BBCはこれらの内容を独自に検証できていない。
こうした中、英海軍トップのサー・トニー・ラダキン大将は、ウクライナが戦争で勝利しつつあるとし、独立国としての将来は保証されていると述べた。
ハルキウの日常、戻りつつあるがスピードは遅い
ウクライナ軍はここ数週間で、第2の都市ハルキウ周辺の12の村を奪還している。
それにも関わらず、いまでも時折爆音が聞こえ、空襲警報のサイレンも頻繁に鳴っていると、ハルキウで取材するBBCのオルガ・マルチェフスカ記者は報告している。
地元の行政機関によると、16日もロシアの砲撃によりハルキウ市内で4人が負傷。周辺の複数の村でも2人が負傷したという。
街では緊迫した雰囲気が続き、生活は開戦前と大きく変わった。ハルキウは日常を取り戻しつつあるが、そのスピードは遅いと、マルチェフスカ記者は指摘している。
キーウに「戻らないで」
一方で、首都キーウのヴィタリ・クリチコ市長は、安全な場所に避難している住民に対し、現時点では首都に戻らないよう呼び掛けている。
クリチコ市長はBBCワールドの取材に対し、「すべての人に安全を100%保証することはできない」と述べた。
キーウではカフェやバーが再開され、「徐々に生活を取り戻しつつある」が、いまも空襲警報が鳴っていると説明。夜間外出禁止令が出されたままのキーウは、「ロシアの侵略者の標的」になっていることに変わりはないと、市長は警告した。
(英語記事 Live Page)