ロシア軍が東部で多数の装甲車失ったとウクライナ 英政府はプーチン氏の元妻や恋人も制裁
ウクライナ軍関係者はBBCに対し、東部ルハンスク州でロシア軍が渡河作戦に失敗し、装甲車のほとんどを失ったと述べた。第2都市ハルキウの市長は、ロシア軍との戦いに勝利し、市民が街に戻り始めているとBBCに話した。他方、イギリス政府はプーチン氏の元妻や現在の恋人とされる女性を制裁対象に加えた。
ロシア軍が渡河作戦に失敗、装甲車など失う
ウクライナ軍関係者はBBCに対し、東部ルハンスク州でシヴェルシキードネツ川を渡ろうとしたロシア軍の大隊が装甲車のほとんどを失ったと語った。ウクライナ軍は3日間で3度、渡河を試みるロシア軍を攻撃したという。
ウクライナ軍は11日にも、ロシア軍が設置した浮橋を破壊したと発表している。
東部ルハンスク州のセルヒイ・ハイダイ知事によると、戦略上重要な東部の都市を包囲するため、ロシア軍はシヴェルシキードネツ川を渡ろうとしている。
しかし、この数日間の激しい戦闘で、現地のウクライナ軍がロシア軍の高速船やヘリコプターを破壊し、「ロシアの舟橋を3度破壊した」と、ハイダイ知事は主張した。また、ウクライナ軍は「ロシア側の重火器など約70台を排除」し、渡河を阻止したという。
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ウクライナ国防省が11日に公開した画像には、川岸に焼け焦げた装甲車数台が写っている。
ウクライナの情報サービス「InformNapalm」によると、ロシア軍は8日に渡河作戦を開始した。
ロシア政府はシヴェルシキードネツ川での攻撃について、コメントを出していない。BBCはハイダイ知事の主張について独自に検証できていない。
ロシア軍の大隊戦術群は通常500人以上で構成されるが、何人のロシア兵が死亡したのかは明らかになっていない。
ハルキウ市長、「戦いに勝利」
各地の戦場では、ウクライナ軍がロシア側に圧力をかけ続けている。ウクライナ軍は北東部ハルキウ州イジュームで反撃を開始したとしている。
ウクライナ第2の都市ハルキウのイホル・テレホフ市長はBBCの取材に対し、ロシア軍との戦いに勝利し、市民が街に戻り始めていると語った。
「ハルキウ市内からロシア部隊はいなくなった。ロシア軍の戦車や装甲戦闘車両はウクライナの戦闘員によって排除された」
「そして、ハルキウの領土防衛とウクライナ軍の努力により、ロシア軍は街から遠く離れた国境方面へ撤退した」
ただ、これは首都キーウ周辺でみられたような全面撤退ではないと、西部リヴィウで取材するBBCのジョー・インウッド記者は指摘する。ロシア軍が街からさらに離れた場所で戦線を維持、あるいは別の場所での戦闘に再び加わる可能性はある。
ウクライナにとっては、戦争における転換点とはならないものの、大きな勝利であることは間違いないと、インウッド記者は説明している。
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ロシアはキーウ周辺から撤退後、東部ドンバス地方に軍事作戦を集中させている。ハルキウを奪還されると、東部掌握を狙うロシア側の計画遂行は難しくなる可能性がある。
ロシア軍が「100以上の病院を破壊」
ウクライナ議会保健委員会のミハイロ・ラドゥツキー委員長は13日、ロシア軍が開戦以降、101カ所以上の医療施設を完全に破壊し、570か所に被害をおよぼしたと、通信アプリ「テレグラム」で明らかにした。
ラドゥツキー氏は、攻撃は偶発的なものではなく、この戦時下でウクライナの医療施設がロシア軍の標的になってきたとしている。
「ロシア軍は医療インフラに標的を絞って砲撃を行っている。彼らはもはや、我々の領土を奪うのではなく、ミサイル攻撃や爆撃ですべての医療施設を破壊しようとしている。病院も産院も医療もなく、医師もいない状況に市民を放置することは、ウクライナ人に対するジェノサイド(集団虐殺)の一環だと言える」
当局によると、3月にロシア軍が南東部マリウポリの産科・小児病院を攻撃した際には、子どもを含む3人が死亡している。
ロシア軍の死者2336人=BBC検証
BBCニュース・ロシア語は開戦以降、ウクライナで戦うロシア部隊の損失について、公式発表や地元メディア報道、ソーシャルメディア、ロシア軍人の親族への聞き取りなどをもとに検証を続けている。
現時点までに、2336人のロシア軍人の死亡を確認している。名前や階級、所属部隊も確認している。これは、ロシア国防省が3月に発表した公式死者数のほぼ2倍にあたる。
確認されている軍人の犠牲者の20%近くが将校で、この割合はこの3カ月間変わっていない。ロシア軍では通信面での問題が続いており、前線で対応する将校が大きいリスクを負っている可能性があると、専門家たちは指摘する。
犠牲者の25%は、偵察活動や襲撃作戦に投入される空挺部隊の兵士や海兵隊員。
犠牲者のほとんどは、ロシア国内で最も開発が遅れている地域や経済的に困窮している地域の出身者だった。モスクワ市民はロシア人口の9%を占めるが、同市出身の軍人で死亡が確認されたのはわずか3人だった。
ウクライナ当局はこれまでに2万7000人近くのロシア兵が死亡したとしている。
イギリス、プーチン氏の元妻と恋人も制裁
イギリスは13日、ウクライナ侵攻をめぐり、プーチン大統領の元妻リュドミラ・オチェレトナヤ氏や現在の恋人とされるアリーナ・カバエワ氏ら12人に対する制裁を発表した。イギリスへの渡航が禁じられ、英国内の資産が凍結される。
オチェレトナヤ氏は2014年にプーチン氏と離婚した。カバエワ氏は2004年アテネオリンピック新体操の金メダリスト。
イギリスは現在、1000人以上を対ロシア制裁の対象にしている。
リズ・トラス英外相は、同国は「プーチンの贅沢なライフスタイルを支える陰のネットワークを暴き、標的にしている」、「プーチンの侵略行為を支援・ほう助する全ての人物への制裁を、ウクライナが勝利するまで続ける」と述べた。
そして、対ロシア制裁はロシアの全部隊がウクライナから撤退した時にのみ解除されるべきだとした。