恐怖心も乗り越えた大野 井上監督「最強の柔道家」

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恐怖心も乗り越えた大野 井上監督「最強の柔道家」 開始から約9分半。支え釣り込み足で相手を畳に転がすと、奥歯をかみしめるように息を吐いた。五輪2連覇。この日、初めて感情がわき出た瞬間だった。

26日行われた柔道男子73キロ級で大野将平(旭化成)が決勝で延長の末に前回銅メダルのシャフダトゥアシビリ(ジョージア)に優勢勝ちし、2016年リオデジャネイロ五輪から2連覇した。

決勝は準決勝に続いて延長になり、先に指導を2つ受けた。リオデジャネイロ五輪の金メダルから5年。絶対的な存在へ駆け上がろうと排してきた大野の心情が「勝負に絶対はない。一瞬で勝負が終わる恐怖があった」と揺れる。開始から約9分半。支え釣り込み足で相手を畳に転がすと、奥歯をかみしめるように息を吐いた。五輪2連覇。この日、初めて感情がわき出た瞬間だった。2019年夏にオール一本勝ちで3度目の世界王者に返り咲くなど、公式戦は18年4月を最後に3年以上も無敗。大学院での学業を優先させ、17年末の本格復帰当初にささやかれた限界説を実力で吹き飛ばしてきた。 威風堂々としたたたずまいの裏で、2連覇への挑戦は「言葉以上に難しさを感じる」と簡単ではなかった。自分の負ける姿が稽古中にも頭をもたげ、「心が折れそうになるほどネガティブな思考」が頭をかけ巡った。19年の世界選手権を制したときも、実は体調不良に見舞われていた。関係者はこのときを「疲れもストレスも相当だった」と明かす。

よりどころになったのは、2連覇を狙ったアテネ大会でメダルなしに終わった経験を持つ日本男子の井上康生監督の「正々堂々と思いっきり立ち向かえばいい」との言葉だった。決勝後、大野と抱き合った井上監督はこうたたえた。

 

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