いじめを受けた「発達障害」の彼女が語る薬の闇 「薬を飲むだけでは生きやすくならない」

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21歳になった加藤さんが今でも飲んでいる薬(写真:本人提供)
日本で子どもの人口が減少する中、「発達障害」と呼ばれる子どもは増え続けている。2006年に発達障害の児童数は7000人余りだったが、2019年には7万人を超えた。それに伴い、子どもへの向精神薬の処方も増加している。
発達障害とされる児童数はなぜここまで増えているのか。そして、発達障害の早期発見、投薬は子どもたちを救っているのだろうか。特集「発達障害は学校から生まれる」の第4回は「いじめを受けた発達障害の彼女が語る薬の闇」。

第1回
学校から薬を勧められる発達障害の子どもたち

第2回
子どもに「向精神薬」を飲ませた親の深い後悔

第3回
低年齢の発達障害、薬で隠される子どもの危機

 

「私が『薬を飲みたくない』と愚痴ると、養護教諭から『発達障害の子は薬を飲んだほうが生きやすくなる』と言われました」

通信制の大学に通う加藤詩織さん(21歳、仮名)は、中学生のときのことをそう振り返る。現在、薬を減らせないことに悩む加藤さんは言う。

「薬だけ飲んでも生きやすくならない。応急処置のようなもの。根本的な問題が解決しなければ意味がありません」

加藤さんがそう話すのは、学校での忘れられない経験があるからだ。

担任から毎日のように怒られた

加藤さんは7歳のとき、発達障害の1つとされるアスペルガー症候群と診断された。集団に入れない、人と目が合わせられないと周囲から指摘された。小学3年生のとき、担任になった教師から毎日のように怒られるようになった。

加藤さんは教科の得意、不得意の差が激しかった。苦手な算数の授業の時は毎回指名され、教室の前に立たされてはできないことを責められた。加藤さんが発達障害と診断されていることを、教師は知っていてのことだ。

「担任がやるなら、自分たちもやっていいんだという感じ」で、同級生からのいじめも始まった。「言葉がつまったりどもったりすると、それを先生にも同級生にもバカにされました。『人間じゃない』『気持ち悪い』と言われ、突き飛ばされたり机を離されたりもしました」

4年生のとき、特別支援学級に移ったが、同級生からのいじめはひどくなるばかりだった。部活に入ると、「○○学級(特別支援学級の名前)のくせに」と言われるようになった。上靴に画鋲をびっしり詰められる、画鋲で体を刺される、階段から落とされるといった暴力も頻繁に受けた。

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